2013年5月31日金曜日

Moon Tiger(本)

J.W.Waterhouse, 'Sweet Rose'
Wars are fought by children. Conceived by their mad demonic elders and fought by boys. I say that now, caught out in surprise at how young people are, forgetting that it is not they who are young but I who am old.
 【書誌情報】
Penelope Lively, Moon Tiger,Andre Deutsch,1987

【あらすじ】
歴史小説を書いて人気となったベストセラー作家のクローディア・ハンプトンは世界の歴史の本を書こうと決意する。死の床にあるクローディアは、ライバルであり、非常に近しくもあった兄のこと、ロシア貴族の末裔である恋人ジャスパーのこと、ジャスパーとの間に生まれた娘のリーザのことなどを回想する。クローディアは赤毛の美人で、気が強く奔放に生きた。第二次世界大戦中は特派員としてエジプトに渡り、戦車の司令官、トムと恋愛関係に陥る。トムとの関係は短かったが、クローディアにとってトムは忘れ難い存在だった。
1987年のブッカー賞受賞作。

【コメント ネタバレあり
本書は日本語訳も出版されているので、原書で読むことをためらっていましたが古本市で買ってしまったので、読みました。ペネロピ・ライヴリーは1933年生まれ、幼少期をエジプトで過ごし、若いころ考古学関係の仕事をしていたことがあるそうです。本書には作者のその経験も反映されており、興味深いです。

ヒロインのクローディアは美しく、聡明で「私のことは自分で決める」という自立した女性です。シングルマザーとなることを選び、男性と対等に議論し、社会的地位も得る、という生き方は現在ではそこまで珍しくないものと思いますが、20世紀前半生まれの女性としては異彩を放っていたのでしょう。「ムーンタイガー」って何だろう、と思いましたが、主人公がエジプトで使っていた蚊取り線香の商品名です(「タイガーバーム」のような??)。

ペンギン版の表紙は蚊取り線香の焚き方がちょっと変
読みながら何度か「もしかしてブッカー賞の好きなタイプの小説があるのだろうか?」と思うほど、2009年の受賞作、Margaret AtwoodのThe Blind Assassinにいろいろと重なる小説でした。具体的には
  • 死の間際にある女性作家が自分の人生を回想する
  • 主人公の回想と、omnipotent narratorからの記述が入り混じる
  • 主人公の辛辣で奔放な性格
  • きょうだい(本書では兄、The Blind Assassinでは妹)との緊密な関係
  • 家庭教師にラテン語を教わる
  • 娘をもうけるが、自分で育て(ることができ)ない。娘との疎遠な関係
  • 若い男性との恋愛。彼に「お話して」とせがむ。
  • 「語ること」への問いかけ
などの点が共通しています。

物語の視点が飛び、時間軸も過去→現在へとまっすぐに進まないので少し分かりにくいです。クローディアの性格にもそこまで魅力が感じられず、彼女の生涯がやや漫然と語られる印象で、「果たして結論はどこへ?」と思ったのですが、最後まで到達すると「歴史とは、物語とは」という問いに対する回答が示されています。
And I can only explain this need by extravagance:my history and the world's. Because unless I am a part of everything I am nothing.
この部分を読んで、ジョン・ダンの有名な'Devotion Upon Emergent Occasions'の有名な一節を思い出しました。
 No man is an island entire of itself; every man is a piece of the continent, a part of the main; if a clod be washed away by the sea, Europe is the less, as well as if a promontory were, as well as any manner of thy friends or of thine own were; any man's death diminishes me, because I am involved in mankind. And therefore never send to know for whom the bell tolls; it tolls for thee.

2013年5月29日水曜日

飛燕草


 飛燕草は日本でもデルフィニウムと言う方が一般的かもしれません。delphiniumという名前はラテン語のイルカに由来し、蜜腺の形がイルカに似ていることからそんな名前がついているそうです。飛燕草というのも雅な呼び名です。300種類くらいあり、色も青、紫、白、ピンク、赤、黄と様々です。一重咲きで濃い青色の花が特にイルカやツバメのように見えると思います。

私が買ったのは薄い紫、水色、青のグラデーションの花でした。下の方のお花はしおれかけていたので外して浅い容器に飾りました。小物入れの蓋、燭台、デルフィニウムと青い色が揃いました。デルフィニウムは1本の茎に100くらい(もっと少ないかもしれませんが)の花が付いているので、本数が少なくても華やかで見栄えがします。

お花の栄養剤を水に入れて活けたらなんだかぐったりしてしまいました。モーツァルトを聴かせれば元気を取り戻すかと思ったのですが、あいにくプレーヤーの調子が悪い日でした。夫が「かわりにあなたが歌ってや」と言ったので私が歌ったところ、なおさらしおれてしまいました。


I am Madame X (本)

John Singer Sargent, 'Madame X(Virginie Gautreau)'
 【書誌情報】
Gioia Diliberto, I am Madame X, Scribner, 2004

【あらすじ】
ヴィルジニー・アヴェンノはニューオーリンズで砂糖プランテーションを営むクレオールの家庭に生まれたが、父の死、南北戦争などをきっかけに母と妹とともに渡仏し、パリに住んだ。成長するとその容姿、ファッションセンス、ピアノの演奏によりパリ社交界の花形となる。ヴィルジニーはハンサムな医師、サミュエル・ポッジとの恋に破れ、親子ほども年の離れた裕福なピエール・ゴートローと結婚する。アメリカ人だがヨーロッパで活躍し、19世期末のパリで大人気だったサージェントはヴィルジニーの肖像画を描きたいと申し出る。露出の多いドレスを着た上流階級の夫人の肖像画はサロンで公開されるや、スキャンダルとなる。
ジョン・シンガー・サージェントの'Madame X'のモデルとなったヴィルジニー・ゴートローの回想記の体裁をとった小説。

【コメント】
サージェントの'Madame X'はニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。個人的には夕暮れの光が見事な'Carnation, Lily,Lily,Rose'や、ボストン美術館にある「エドワード・ボイトの娘たち」の方が好みですが、「マダムX」はドラマチックでインパクトのある一枚です。

カトリックの女子校、ピアノのレッスン、フレデリック・ウォルトなどの当時人気のあった衣装デザイナー、お化粧(ヴィルジニー・ゴートローはモーヴがかった白粉を塗り、髪の毛はヘンナで赤褐色に染め、耳に紅を差すといった個性的なメイクをしていたそうです)、パーティ、オペラなど何かあると背景に花が出てくる少女マンガのような甘味の強い小説です。サージェントの描くゴートロー夫人は威厳があり、神秘的ですが本書に書かれる彼女は虚栄心が強く、人々の注目を浴びることに喜びを感じる性格です。彼女の叔母で、意に沿わぬ結婚を強いられそうになって自殺をはかり、後にパリに出て画家となるジュリーという女性がむしろ興味深いです。なお、実在のジュリーさんは夭逝し、画家になったくだりはフィクションだそうです。同様に本書のかなりの部分は史実には忠実でないようです。


サージェントは小説でゴートロー夫人と愛人関係にあったとされているサミュエル・ポッジ医師の肖像画も描きました。真っ赤な部屋着を着たこの作品について、ゴートロー夫人は「悪魔みたい」との感想を持ちます。ポッジ医師はプルーストの『失われた時を求めて』のコタール医師のモデルとなった人物です。

19世期末のパリでは日本や中国の家具調度などが流行しました。芸術に造詣の深い趣味人であったゴートロー氏が、出会ったばかりのヴィルジニーのお母さんの自宅の、ロココ風なインテリアを「下品」と言って屏風や漆塗りなどの東洋趣味の家具に入れ替えると、そのサロンはオシャレという評価が高まって人気が出た、という部分がおもしろいです。

「マダムX」は当初ゴートロー夫人が着ているドレスの右肩のストラップが腕のところまで外れかかっていて、そのこともスキャンダルになりましたが、サージェントは後に描き替えました。パリのルクセンブルク美術館にはストラップが外れかかっているバージョンがあるそうです。「マダムX」をめぐるスキャンダルに嫌気が差したサージェントはロンドンに渡り、肖像画を多く受注し、パリに戻ることはありませんでした。晩年には貴族や大金持ちのご機嫌をとりながら肖像画を描くことも嫌になり、ボストン公立図書館の壁画などを描きました。壁画は今でも図書館に行くと見られます。



一方、ゴートロー夫人はサージェントの肖像画により世界中で有名になり、現在で言う「セレブ」のようになりました。彼女を描きたいという画家も多く現れました。他の肖像画を見ると、サージェントが他の画家とは一線を画す存在であったと同時に、いかにモデルを絶妙に美化する才能の持ち主であったかが分かります。

レモン・ドリズル・ケーキ


 ロンドン・ティールームさんが「レモン・ドリズル・ケーキ」について書いていらしたので、作ってみました。これに似た、シロップやアイシングのかかったレモンケーキはよく市販されているのを見かけますが、レシピを調べてみると、大量の砂糖が使われていて市販のものはとても甘いということが容易に想像できるので自作のケーキは甘さ控えめにしてみました。それでもケーキにシロップをかけるので、十分甘いです。

レモン・ドリズルケーキのレシピはインターネット上に色々ありますが、砂糖の量を調整し、以下のレシピで作りました。

【ケーキの材料】
  • 卵 2個
  • バター 100グラム
  • 砂糖 80グラム
  • 粉(薄力粉が良いと思いますが、アメリカだと中力粉が一般的) 150グラム
  • ベーキングパウダー 小さじ2杯
  • 牛乳 大さじ1杯 
  • レモン 1個分の皮
【アイシング】
  • レモンジュース レモン1個分
  • 粉砂糖(コーンスターチ入り) 120グラム
 【手順】
  1. バターを室温に戻し、粉とベーキングパウダーをふるう。レモンの皮をすりおろし、レモンジュースを絞る。
  2. バターを泡立て器で混ぜ、砂糖を加えさらに混ぜる。
  3. 卵を1個ずつ割って入れる。牛乳、レモンの皮を加える。
  4. 粉を加えてヘラで粉っぽくなくなるまで混ぜる。180度に予熱したオーブンで30分くらい焼く。
  5. 焼いている間にアイシングを作る。レモンジュースに粉砂糖を加え、泡立て器で混ぜる。
  6. 焼きあがったらフォークでケーキに穴を空ける。アイシングをかける。
私はアイシングを作るとき加熱したため、粘性の高いシロップのような変な物ができてしまいました。それで見た目もあまり良くありません。酸味が強く、レモンの香りが効いていてなかなかおいしいケーキでした。紅茶に合います。


2013年5月26日日曜日

パスタで焼きそば


 先日、夫がタイ料理に連れて行ってくれました。yelpで事前に評価を調べ、レビューでも特においしいと書かれていたパッタイを注文したのですが、油まみれの伸びた麺に砂糖と酢の味しかせず、がっかりしました。帰ってから気持ち悪くなりました。

調べると焼きそばの麺がなくても、パスタの茹で水に重曹を入れると中華麺のようになるとのことだったので、そうであれば私の方がタイレストランよりもおいしく作れるでしょう、と自惚れて作って、みました。焼きそばとパスタの中間のようなものができました。重曹はいつも洗濯・掃除に使っているのでこんなので本当に大丈夫だろうか、と小さじ2杯しか入れなかったのですが、足りなかったようです。またパスタの感覚でアルデンテにすると焼きそばらしくならないので、柔らかめに茹でる方が良いようです。ともあれ、先日のパッタイよりはおいしい物が食べられました。醤油、オイスターソース、鶏ガラスープの元などで味を付けました。重曹+パスタで、わざわざアジアンマーケットでお高い中華麺を買わなくても焼きそばのようなものが食べられて便利です。

2013年5月25日土曜日

The Girl Who Fell From the Sky/Trapeze (本)

Violette Szabo, 1921-1945
【書誌情報】
Simon Mawer, The Girl Who Fell From the Sky(UK) /Trapeze(USA),2012

【あらすじ】
マリアン・スートロはイギリス人の父、フランス人の母の娘としてスイスで成長し第二次世界大戦下、ロンドンにてSpecial Operations Executive特殊部隊に採用された。スパイとして武器の扱い方やモールス信号などの訓練を受けた後、パラシュートを使いフランスに渡る。「アリス」と名乗り、フレデリック・ジョリオの研究所で放射能研究に従事する幼なじみの研究者をイギリスに連れ戻す任務につく。マリアンは訓練の成果と従来の聡明さにより、無事に任務を果たせるかに見えたが…

【コメント】
昨年出版されたサイモン・モウアーの最新作です。イギリスではThe Girl Who Fell From the Skyというタイトルで出版されましたが、アメリカには既に同タイトルの本があったそうでTrapezeという題名です。内容は同じのようです。

ヒロイン、マリアンのお父さんは元国際連盟の職員で、マリアンは修道院付属の学校で教育を受けました。お兄さんは物理学の研究者でした。裕福なインテリ家庭出身のマリアンは戦争中でも困窮することはなかったようですが、スパイとして採用された時からドラマチックに生活が変化します。

サイモン・モウアーの小説は三冊読み、登場人物の精緻な心理描写が印象的でしたが本書では趣きが異なり、アクションに重点が置かれています。占領下の異国でスパイ活動を行い、無線機器の道具を体内に入れて運ぶなどやっていることは重くてハードとはいえ、読後感はGlass Roomのように圧倒的に迫るものがなく、呆気にとられます。スパイ活動は常に多大な緊張を強いられることが全篇から伝わり、あまり考えると怖くて行動できなくなりそうです。それで心理描写が少ないのだろうかと思いました。

マリアンは行動力があり、使命に向かって突き進む断固とした性格です。一緒に訓練を受けるイヴェットという女性はヒロインとはあらゆる面で対照的で、良家の出身でもなく、弱く、悲観的です。二人はスパイとしては別の活動に従事しますが、途中から引き寄せられるように再会しマリアンの運命はイヴェットに操られ、(おそらく)両者とも似たような最後に向かいます。生まれや性格に関係なく、結局は時代の犠牲者となってしまった彼女たちの姿は悲劇的です。

第二次世界大戦中、イギリスの特殊部隊の女性スパイは55人いたそうです。調べてみるとViolette Szabo(イングリッド・バーグマンに似た美人)という女性が、一部本書のヒロインのモデルとなっているのだろうか、と思いました。ヴァイオレット・サボーはイギリス人の父、フランス人の母を持ち、フランス語能力を買われて採用されました。マリアンのようにスパイの訓練を受けた後、パラシュートでフランスに降り立ちました。ドイツ軍に占領されたフランスでレジスタンス活動の支援をし、逮捕されそうになると銃撃戦となりました。最終的には捕えられ、拷問にかけられ、ラヴェンズブリュックの強制収容所で処刑されました。マリアンの最期については本には言及がありませんが、55人のスパイの内、13人はスパイ活動中、もしくは強制収容所で亡くなったそうです。ご冥福をお祈りします。

2013年5月23日木曜日

「一滴だけよ」猫と少女のフィギュリン


ビング&グレンダールの猫と少女のフィギュリンを入手しました。Only One Dropと言うそうです。

一瞬の動きをとらえたフィギュリンです。制服のような、清楚で質素なワンピースのデザインがすてきです。細い箇所や、衣服のひだなどが、非常に壊れやすそうな磁器なので、丁寧に扱う必要がありますが、その繊細さに愛着が沸きます。ロイヤル・コペンハーゲンは現在もフィギュリンを販売しています。絵付けに使用できる顔料の種類が増えたのか、以前のものに比べて顔色がよく、顔立ちがはっきりしていて表情も明るい子供たちが多く、個人的にはあまり好みではありません。磁器の冷たい質感には、自然な、憂わしげな表情の方がふさわしいと思っています。とかく、「元気で明るい」ことが重んじられる風潮があり、たしかに仕事に関してはその方がいいのかもしれませんが、趣味の世界までその価値観を持ち込まなくていいのでは、と思います。


日本で買うよりは安いものの、フィギュリンの収集に莫大な財産を投じてしまいました(私にとって5万円以上は莫大な財産)。私が持っているのは、ほとんどが手に入れやすく、値段もそこまで高価ではない物ばかりですが、これ以上足を突っ込むと破産しそうなので、これにてコレクションはやめようと思います。キャビネットのガラスの中にしまって時々眺めて悦に入っています。

大根に味を染みさせる方法


アメリカではそこまでポピュラーではなく、普通のスーパーマーケットには売っているときといないときがありますが、アジアンマーケットに行くといつも大根を買ってきておでんを作ります。私はおでんを作るとき練り物を入れません。アメリカだと手に入りにくく、おでん全体が練り物の味になってしまうのが好きではないからです。

鶏肉か豚肉を少し入れて、八方だし、砂糖、昆布で煮ます。大根は味が染みているとおいしいので、買ってくると切って冷凍しておいて調理するとき解凍しないで使います。その他、下茹でして冷たい出汁に入れても味が染みるそうなので、温度差があると味が染みるのだろうかと思いました。他には肉、干し椎茸、こんにゃく半分、ゆで卵をおでん種にします。

おでんは本来寒い時期に食べるものですが、ボストン近郊はまだ雨が降ると気温が10℃前後まで下がる寒さです。少し暖かくなって気温が20℃を越えると、すぐに人々は上半身裸のような薄着になって日光を浴びたがり、屋内は設定温度を15℃くらいにして冷房で冷やします。一方で、私は日光が出てくると全力で紫外線予防をして皮膚をおおい、クーラーは極力つけません。

2013年5月19日日曜日

古本市で買った本



レキシントン図書館の古本市に行きました。あまり本を増やすと場所塞ぎなので、今後はなるべく図書館と電子書籍で読書することにしようと思っています。買うのは、英語が難しいため精読したい本と、図書館の貸出期間内に読み終わりそうにない長い本、画像中心の本です。

ヒラリー・マンテルのWolf Hallは読みたいと思っていましたが、長いですし、定価で買うと高いので、古本市で買えて良かったです。読み終わったらまた図書館にリサイクルします。

アメリカ印象派の薄い画集を買いました。印象派はフランスが有名ですが、私はサージェントやウィンズロウ・ホーマーなど、アメリカ印象派が好きです。

Maurice Prendergast
 Maurice Prendergastの名前は渡米してから知りました。ボストンに縁のある画家なので、ボストン美術館にも何点か作品があります。このページには「プレンダーガストはうまい画家ではなかった。何でも師匠の模倣をした。絵の色彩はくすんでいるし、パステルを使いすぎた」となんだか身も蓋もないことが書かれていますが、私は人物が多くてゴチャッとした、スナップ写真のような絵がかわいいな、と思います。Wikipediaからも彼の作品を見ることができます。上の絵は、ボストンのパブリック・ガーデンの風景です。噴水は現在は別の物になっていると思いますが、雰囲気は確かに私の知っているパブリック・ガーデンに似ていると思いました。

Charles Prendergast
チャールズ・プレンダーガストは上記モーリスの弟です。ムガル帝国の絵巻(?)のようです。こちらもかわいい。

J.S.Sargent
サージェントの読書する女性です。分類上は「印象派」なのかもしれませんが、貴族や著名人の肖像画を多く描き、ややコンサバティウ゛でイギリスのレノルズやゲインズボロに通じるものを感じます。

Childe Hassam
 象徴主義の絵画のような意味深な一枚です。好きな画家が増えていくのはうれしいことです。

家に帰って夫に「こんな本買いました」と言ったら、夫は「良かったね。ええ本買えたねぇ」と言ってくれました。

2013年5月17日金曜日

Classic FM、映画『プライドと偏見』

Classic FMはもともとラジオのクラシック音楽番組ですが、ウェブサイトでクラシック音楽、バレエ、映画などに関連したおもしろい記事や写真を公開しています。最近はフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の新しい映画に関する記事がよく見られます。上の写真はClassic FMがfacebookのページに掲載していた写真で、カンヌ映画祭の写真です。たくさんの黒や紺色の雨傘と、『ギャツビー』の主演女優のキャリー・マリガンの白いドレスのコントラストが素敵です。他の人たちはほとんど黒っぽい衣装を着ているせいか、キャリー・マリガンの立っている所だけ雨があがっているように見えます。ルノワールの絵を思わせます。


キャリー・マリガンは『プライドと偏見』ではじめて見ました。その時は五人姉妹の中でも一番目立たない役でしたが、今や飛ぶ鳥を落とす勢い(?)ですね。


ところで、映画を見て「他の4人は茶色い髪の毛と目なのに、なぜ長女のジェーンだけ金髪碧眼なの?」と少し不思議に思いました(遺伝形質として金髪も青い目も劣性だったと思うので、そこまで不思議ではないかもしれませんが)。 でも、映画でキーラ・ナイトレイが演じた次女のエリザベス役は当初、ロモーラ・ガライが予定されていたそうです。『自負と偏見』の5人姉妹について、「ジェーンとエリザベスは思慮深い性格で仲が良いが、妹たちとは接点が少ない」、「三人の妹たちはおバカで、末娘に至っては素行不良である。にもかかわらず、やはり頭の良くない母親のベネット夫人は妹たちの方を贔屓する」ということから、「ジェーンとエリザベスは前妻の娘で、ベネット夫人は継母、妹三人は異母妹ではないか?」という説があります。この説は噂話のようなもので、まじめに議論することではないのですが、そう考えると腑に落ちる点も多いです。金髪碧眼のロモーラ・ガライがエリザベスを演じていたら、映画でも姉2人と妹3人が異母姉妹のように見えて、おもしろかっただろうと思います。



なお、「異母姉妹説」については上の本に収録されている論文の一つに書いてあったような気がしますが、出典不明の別の論文だったかもしれず、詳しくは覚えていません。

2013年5月13日月曜日

One Good Turn(本)


出典 Wikipedia
【書誌情報】
Kate Atkinson, One Good Turn, Doubleday, 2006

【あらすじ】
Case Historiesに続く、ジャクソン・ブロディ探偵小説第2巻。ジャクソンはエジンバラにて、車をぶつけられたことに憤怒した男がぶつけた男のプジョー(車)の窓ガラスを野球のバットで破壊する事件を目撃した。暴力的な男がプジョー男の頭を目がけてバットを振り下ろそうとした瞬間、ベストセラー作家マーティン・カニングがカバンを投げてバット男を阻止する。お人好しなマーティンは厚かましいテレビスターを無償で居候させていた。一方、ジャクソンは海辺を散歩している時に若い女の死体を発見する。捜査に関わるエジンバラの婦人警官、ルイーズは分譲住宅に住んでいたが、この住宅の販売者は悪徳業者、ハッターで詐欺容疑で捜索を受けていた。ハッターはコールガールと過ごしている時に心臓発作を起こし、ICUに担ぎ込まれる。しかし、夫に愛想をつかしていたハッター夫人は度重なる問い合わせにも応答しない。

【コメント】
ケイト・アトキンソンのNot the End of the Worldと、ジャクソン・ブロディ探偵第一作のCase Historiesはおもしろく読みましたが、本作はこの2冊に比べて少し完成度が劣るような印象を受けました。

本書の主人公は4人いて
  • ジャクソン・ブロディ探偵
  • ベストセラー作家 マーティン・カニング
  • 婦人警官でシングルマザーのルイーズ・モンロー
  • 悪徳不動産屋の夫人、グロリア・ハッター
それぞれの視点から交互に物語が語られます。それ以外に正体不明のプジョー男、 テレビスター、婦人警官の息子、掃除婦の視点からの逸話もはさまれ、さらに周辺人物も多く、時折話が回想になったり、家族やペットへの思いを語ったり、はたまた夫の浮気を確信したりなど、一冊の中にいろいろと詰め込みすぎていて読みにくいです。

William Morris, 'Strawberry Thief' 出典 Wikipedeia
 たくさんの登場人物の中で、ベストセラー作家のキャラクターが魅力的です。彼は50歳で独身ですが、理想の妻について妄想するのが好きです。「休日には妻の手作りのお菓子を食べ、ウィリアム・モリスの『イチゴ泥棒』のソファに座って一緒にクラシック音楽を聴き、食後には息子と飛行機の模型で遊ぶ」という妄想に少女趣味が炸裂していておかしいです。(それに私としてはちょっと他人事とは思えません)

本書のテーマは「ロシア(東欧)」です。おとなしく人の良いベストセラー作家は過去にロシアに行って人に言えない経験をしました。また、悪徳不動産業者ハッターは不動産業以外にロシアから経済的に困窮している女性を連れてきて掃除婦やコールガール、さらに英国人男性の妻として斡旋するという黒い組織を操っていることが明らかになります。この組織は、告発しようとした少女が暗殺され、別の少女は「詐欺的な不動産事業なんて何でもないわよ。あの人もっと悪いことをしているわ」と言うくらい凶悪なことをしていたようです。加えて、すべての登場人物がハッター氏の組織に接点があり、彼が巨悪であることが仄めかされます。にもかかわらず、肝心のハッター氏は最初からICUにいて、組織の詳細は不明のままなので、ストーリーとして消化不良の感があります。ロシアは私も数年前に旅行したことがあります。エルミタージュ美術館に見られるような過去の栄光とは裏腹に、住宅や農村が貧しげなことに驚きました。裏に巨悪が存在しているかどうかについてはさておき、近年は小説のとおり、高い教育を受けている人でも西欧に出稼ぎに行ったりする現実があるようです。

テーマがロシアだけに、マトリョーシカが何度か登場します。ベストセラー作家の家に置いてあったのはプーシキンの物語のイラストが描いてあるマトリョーシカでした。こんな感じの物だっただろうかと思います。マトリョーシカは歴史のあるロシアの民芸品かと思っていましたが、案外伝統が短いようです。

2013年5月8日水曜日

ダロウェイ夫人のマントルピース

And Lucy, coming into the drawing-room with her tray held out, put the giant candlesticks on the mantelpiece, the silver casket in the middle, turned the crystal dolphin towards the clock.
 ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』は中流階級の初老の婦人、クラリッサ・ダロウェイの1日
(1923年5月)を題材にした小説です。初夏のロンドンを舞台として、登場人物の若かったときの記憶、第一次世界大戦中のこと、現状の満足感と不安、フェミニズムへの関心などを「意識の流れ」の手法で書いた内容で、マイケル・カニンガムにより『めぐりあう時間たち』という小説に翻案され、映画化作品もあります。
he was a failure, compared with all this--the inlaid table, the mounted paper-knife, the dolphin and the candlesticks, the chair-covers and the old valuable English tinted prints--he was a failure! I detest the smugness of the whole affair, he thought; 
『ダロウェイ夫人』はファッション、化粧、インテリアなど女性らしい細々とした部分も書き込まれていて、その点でも興味深いです。ダロウェイ夫人の居間に飾られた大きな燭台、銀の小箱、クリスタルのイルカの置物、ペーパーナイフ、彩色版画などはクラリッサが娘時代に淡い思いを寄せていたピーター・ウォルシュからは「気取っている」と批判されますが、ヴィクトリア朝の名残りをも留める、当時のイギリス中産階級のよくある室内装飾だったのではないかと思います。
There were flowers: delphiniums, sweet peas, bunches of lilac; and carnations, masses of carnations. There were roses; there were irises. (中略) And then, opening her eyes, how fresh like frilled linen clean from a laundry laid in wicker trays the roses looked; and dark and prim the red carnations, holding their heads up; and all the sweet peas spreading in their bowls, tinged violet, snow white, pale--as if it were the evening and girls in muslin frocks came out to pick sweet peas and roses after the superb summer's day, with its almost blue-black sky, its delphiniums, its carnations, its arum lilies was over...
ダロウェイ夫人は冒頭でパーティのためのお花を買いに行きます。花屋さんで販売されていたのは、「飛燕草、スイートピー、ライラック、カーネーション、バラ、アイリス」でした。また、ピーター・ウォルシュは「最近、青いアジサイについて印象的な手紙をくれた人がいたな」と考えます。手紙の主であるサリー・シートンは大部分が回想の中で登場しますが、小説のキーとなる人物です。サリーが若いときに、花を頭のところで切って、鉢に浮かべて飾った、という描写もあります。青いアジサイは映画『めぐりあう時間たち』でも印象的に使われています。

ダロウェイ夫人のマントルピースはどんなふうだったかしら、と思いキャビネット上のディスプレイをしてみました。
銀無垢の小箱などというものは高価で手が出ませんので、蓋だけシルバーの瓶にしました。クリスタルのイルカは各社から色々な製品が販売されています。私のはウォーターフォード製でした。嫌味のない、かわいらしい形のイルカですし、波の形が溶けた飴のようなので気に入っています。ダロウェイ夫人の燭台は銀製のカンデラブラだっただろうかと想像しますが、ロウソク立てなど複数あってもあまり使う機会がないので既存のジャスパーウェアにしました。マントルピース用の大きな時計の代わりに砂時計を欲しいと思い、amazonで検索してみました。砂時計は意外と高く、安価な物はレビューに「砂が詰まるので時々振らないといけない。砂時計として機能しない」と書いてあったので諦めました。

原文はこちらで読めます。日本語訳はいくつか出版されています。みすず書房の近藤いね子先生の翻訳と集英社の丹治愛先生の訳が読みやすかったです。角川文庫版が一番普及しているように見受けますが、読みにくい文章で苦痛に感じました。光文社文庫版は読んでいません。私はオーディオブックも時々聴いています。日本ではDVDは出ていないようですが、映画も美しく、心打たれる作品でした。

2013年5月6日月曜日

記念日


ボストン美術館
とある記念日だったため、夫とささやかにお祝いをしました。ボストン美術館に遊びに行きました。お天気が良かったです。

胡乱な写真になってしまいました
帰りに夫がお花を買ってくれました。5月なのでスズランがいいなと思ったのですが、売っていませんでした。それでアイリスを買ってもらいました。アヤメ、カキツバタ、ハナショウブのどれかしらと思って調べると、ハナショウブのようです。香りはほとんどありませんが、色がきれいですし、細長く尖った葉がすてきだと思います。固く閉じた蕾を買ってきたら、最初花が小さく咲くのですが、徐々に花弁が広がり、大きな花になっておもしろかったです。

トライフルを作りました。本来は大きなトライフルボウルに入れて作るようです。二人で食べるだけなので小さい器に入れました。パフェに似たお菓子です。

2013年5月5日日曜日

ボストン美術館再訪


 月初の週末で、入館料が無料になる日だったのでボストン美術館に行きました。今回はこれまでにあまり見ていなかったギリシアやアジアの展示も見ました。

人物画はルネサンス以降の西洋の作品が美しいと思いますが、アジアの古い美術は動物をかたどった作品がおもしろいです。上の写真は紀元2世紀の中国のもので、鳥の泳ぐ池の模型です。魚もいます。

とてもかわいい雀

アメリカ美術の展示は工芸品を中心に見ました。


アーツ&クラフツの室内がいいなと思いました。絵画や彫刻を見て欲しいとは思いませんが、こういうものを見ると「我が家にも一つ…」と思って似たものを探したりし始めるので困ります。

良性具有のような美青年
ボストン美術館は大きい美術館ですし、展示も時々変わるので、何度行っても楽しめます。休日の楽しみはやはり美術館がいいな、と思いました。


2013年5月4日土曜日

ビーコン・ヒル周辺の春

教会。ごりっぱ



ケマンソウはターシャ・チューダーのイラストによく見られます。チューダーさんがボストンの名家出身だったためか、ニューイングランド的な花という気がします。英語ではOld Fashioned Bleeding Heart, Venus's Car, Lady in a Bath, Dutchman's Trousersなどおもしろい名前がついていて、日本語では「鯛釣草」ともいうそうです。ハート形の花がかわいらしく、よそのお宅のお庭でしたが辺りを伺った後こっそりと写真を撮ってしまいました。

これぞボストン(?)


この下の方には路上駐車が多いのですが、いつも車を写真に撮るまいとがんばるので、下の方が切れたマヌケな構図になります。


2013年5月3日金曜日

パブリックガーデンの花(チューリップ以外)

ヤマブキ
スイカズラ。甘い香りがします。
サツキ

種類は分かりませんが、目に染みるような鮮やかな青い花です。他の花は黄色、赤、ピンクが多く、青い花はこれとムスカリだけでした。



チューリップもすてきですが、桜は格別です。



逆光は写真としては良くないようですが、私は葉や花弁をから青空や日の光が透けて見える様子が好きです。ステンドグラスのようです。


マグノリア。最盛期を過ぎて、緑の芝生に花弁が散っているのがきれいです。