2015年3月31日火曜日

マウリツィオ・カッツァーティ

「聖家族、聖アンナと幼児の洗礼者ヨハネ」1545年、ウィーン美術史美術館

 通勤中は英語を聴きますが、英文を読みながら英語を聴くと、二兎を追う者は一兎をも得ず、でどちらもまるで理解できないので、座れて読書するときは音楽を聴きます。大学生の時はロマン派以降が好きでした。最近5年くらいは専らバロックを聴きます。お気に入りはハインリヒ・ビーバー、チャールズ・エイヴィソン、ジャン・マリー・ルクレア、J.P.フォン・ヴェストホーフ等です。

バロックの作曲家は細かい人がたくさんいすぎて、どうやって探していいのやら、よく分かりません。フランスのラジオ番組、France Musiqueはバロック音楽を幅広く取り上げているので、購読しています。たまたま放送されていた、マウリツィオ・カッツァーティの音楽に衝撃を受けました。初めて聴いたとき、「!!!!」のような感じになって、笑みが抑えられなくなり、何度も聴いていたら興奮して眠れなくなりました。上の人からの引継ぎもあって、3月は業務量が多く、厳しかったので、朝、駅から会社までと、昼休みは毎日これを聴いて、仕事モードに切り替えるようにしていました。フランス語は分からないので、まずは「この曲は何なのか」ということを聴き取るところからして一苦労で、演奏家も分からず、休日に、血眼になって探しまくり(?)、やっとCDを見つけてすぐさまamazonに買いに走りました。itunesでは販売されていません。ヴィヴァルディやコレッリのような大御所ではないため、音源は少なく、あったとしてもバロック・コレクション的なCDに2,3曲含まれるだけです。itunesは1曲ずつ、バラで購入できるのでその点便利だと思いました。

私の音楽の好みは、10人中10人が「変だ」、「理解できない」、「何これ」というものなので、商品リンクだけは張っておきますが、他人様に「これいいですよ!」などとお勧めしようとは思いません。youtubeでもCD一枚分、すべて聴くことができますが、違法であることは明らかなので、リンクを張るのは控えます。

なお、トップ画像は本文とは無関係です。

2015年3月30日月曜日

レイチェル・カーソン『沈黙の春』

デーメテール 出展 Wikimedia Commons


【書誌情報等】
Rachel Carson, Silent Spring, 1962=レイチェル・カーソン著、青樹簗一訳、『沈黙の春』新潮社、1964年

【あらすじ】
Wikipedia

【コメント】
化学メーカーである勤務先は、農薬も重要な製品の一つです。入社時にResponsible Care(化学メーカーにおけるCSR的な活動)研修を受け、「カーソンの『沈黙の春』を読んでみてください」と言われました。ビジネス書や自己啓発本ではなく、『沈黙の春』を勧められたことに感銘を受けました。

本としては、読んですごくおもしろい、というものではなく、また、事例をやや脈絡なく列挙している感があり、読みにくい部類に入ると思います。農薬や化学物質の専門的な話もあるので、分からないところは飛ばし読みしました。しかし、本書が農薬の使用に警鐘を鳴らし、社会的な影響も大きかったことは、知っておかなければいけないことだと思いました。

最初は英語で読もうと思っていましたが、日本語で読んで良かったです。化学物質名のほか、鳥や植物の名称も多く登場するので、英語で読んでいたら、それが鳥や植物の名前であることすら分からずに、かなりストレスが大きかったものと思われます。

そして、その後、政府の規制が非常に厳格化、化学メーカーの自主規制により、農薬の危険性に対する認識は、本書が発表された当時とは大きく変わりました。本書の功績も大いにあったようです。業務に必要なので、農林水産省の「農薬の基礎知識」と農薬工業会の「教えて!農薬Q&A」は日々参照するようにしています。これらを読むと、これだけ増えた世界の人口を支えるためには、農薬は必要不可欠であることが分かります。こういったサイトは、農薬の重要性を強調し、多少は「肩入れ」して書かれている可能性もありますから、割り引いて考えないといけないだろうとは思いますが、農薬がなければ、作物の収穫は半分以下になるようです。現代の日本で「飢饉」などはまず起こらないのは、グローバル化や、日本が経済大国であるのも理由だと思いますが、農薬の貢献もあるはずです。事情が許せば、低農薬や無農薬の作物を食べるに越したことはありません。しかし、すべての人にそういった作物が行き渡ることなどは現実的とは思えません。

中身を知らずに、農薬に対してただネガティブイメージを抱いていたことこそが良くないのであって、せめて自分の直接関係のある部分は、なるべく無知を解消していきたいものだと思った次第です。

2015年3月29日日曜日

ミネラルザワールドin横浜2015



帰国したらミネラルショーに行ってみたいと思っていました。アメリカでも大規模なミネラルショーが開催されますが、ほぼ郊外の何もないところで行われるので、足がないとなかなか出かけられません。鉱物愛好家よりも、鉱物業者が多く集まるのではないかと思います。東京・横浜ではほぼ毎月のようにミネラルショーがあるようです。毎回出かけたら破産してしまいますが、数か月に一度、乏しいお小遣いを握りしめて行くのも、なかなか楽しいお祭だと思います。

今回購入したのは、後列左から
  • 南アフリカ産蛍石
  • コソボ産緑玉髄 (ガラス瓶に入っている)
  • スペイン産蛍石
  • ドイツ産蛍石
  • 産地不詳、ラピスラズリ
です。鉱物は「青色縛り」で収集する方針ですが、緑玉髄は、どれでも500円の箱の中に入っていたもので、鮮やかできれいな色です。「クリソプレーズ」という英名は、ギリシア語に由来し、「金」と「ネギ」という意味らしいです。鉱物をネギに喩えるのがユーモラスです。

スペイン産蛍石は、すでにいくつか所有していますが、色と透明感、結晶の形が好みで、つい手にしてしまいます。その右に置いているのが、南アフリカ産蛍石は、ボウル一杯の水に、インクを1滴だけ垂らしたような、ごく淡い水色です。凝視すると、カラーレスかも、とも思うほど、薄い色ですが、一見するとやはり青みがかっていて、その捉えどころのなさが魅力だと思います。

ラピスラズリは、研磨していないものは粉っぽくて、固形顔料のよう (実際、高級顔料として使用されます)なのに、研磨してあると宝石っぽくなるので、私は研磨品が好きです。スピリチュアルとか、パワーストーンなどは胡散臭いものだと思っていますが(失礼)、ラピスラズリの群青と、うっすらと入っている金色のパイライト、星空のようでもあり、地球のようでもある模様を眺めていると、なんとも離し難い気分になります。深入りすると危険だと思いました。驚異の青い棚に飾ります。





2015年3月15日日曜日

百草園(もぐさえん)


自宅から電車で30分ほどで行ける、梅の名所の百草園に行きました。駅から徒歩10分ほどですが、途中からかなり急な坂道になります。下りは転げ落ちそうになるほど急なので、ハイヒールなどで行くのはやめた方が良さそうです。



周りを見ても、こんな所に庭園があるとは分かりにくく、ちょっと秘密の花園のようです。高いところにあるので、見晴らしが良いです。園内も傾斜が多く、階段の上り下りばかりですが、高低差がついているので、一度にたくさんの花を見渡すことができます。




百草園はアジサイや、藤などもありますが、特に梅が多く、500本以上あるそうです。夕方でもたくさんのお客さんが入っていました。





梅のほかに、カキツバタ、スイセンなどがありました。どちらかと言えばこぢんまりとしていて、散策しやすいです。裏側はあまり人手の入っていない、山のようになっていて、おもしろい構造です。ボストンも好きでしたが、日本もいいなと思いました。

2015年3月14日土曜日

驚異の青い棚 6.イリノイ産蛍石



クインジー・マーケットはニューイングランド水族館の近くにあるボストンの観光名所の一つです。お土産屋さんが立ち並びますが、日本のデパートや、雑貨屋さんなどとは違い、そこまでオシャレでもないものを高く販売している店が多い印象がありました。ただ、その中の鉱物ショップは創業30年以上の老舗で、ボストンには他に鉱物を取り扱っているお店はほとんどないため、その付近に行くと立ち寄っていました。

最後に行ったときに、イリノイ産の青い蛍石を買いました。ショーケースの奥の方に埃をかぶっている黒っぽい石で目立ちませんでした。店員さんも、手にとってみて、「あら、これって三色なのね。中の方に黄色と紫も見えますよ」と言っていました。帰ってから掃除をしてみました。暗いところに置いていると、地味な蛍石ですが、日にかざすとちゃんと三色が見えます。深い青が気に入っています。イリノイ産蛍石のきれいな物は、市場に出回りにくく、探しても手頃なものはなかなか見つからないので、うれしかったです。

ところで、これを買いに行ったときはホテルに滞在していて、最寄駅からホテルまでバスに乗ったところ、慣れないバス停で、降車ボタンを押しそびれました。次のバス停で降りればいいや、と思って慌ててボタンを押したら、次のバス停までは10㎞以上離れていて、一般道を高速でガタガタと走るバスの中で冷や汗をかきました。結局、巡回ルートだったので、もともと降りようと思っていたバス停に、40分ほどもかかって戻ってきたのですが、降りたバス停の近くに横断歩道がなく、幅数十メートルはありそうな広い道路を慌てて横断しようとして、道路の中央に落ちていた水たまりにはまり、足を滑らせて転びそうになりながら、やっとの思いでホテルにたどり着きました。

このように(無駄に)苦労して手に入れた蛍石でありますから、ボストンの記念という意味とも相まって、一際思い出深いものです。

2015年3月8日日曜日

驚異の青い棚 5.切子



ウォーターフォードクリスタルや、ボヘミアのクリスタルガラスも、ゴージャスですばらしいものですが、コバルトブルーのすずしげなガラスといえば、日本の切子に並ぶものはないだろうという気がします。欧米のクリスタルはどちらかといえば堅牢、頑丈という印象ですが、切子は儚げで、粋だと思います。

寺田寅彦がエッセイ、「涼味数題」に書く「涼しさの標本」という言葉を好ましく感じます。青い切子の盃も日本的な「涼しさの標本」と言って良いものだと思います。切子の盃に冷酒を注いで、蕎麦を肴にすれば、それは涼しげです。

ヴンダーカンマーに陳列するものの一つとして、「外来の物」があります。ヨーロッパのヴンダーカンマーには、珍しい舶来品として、アフリカの民芸品的なものや、中国の磁器などが取り入れられることがあります。切子がヴンダーカンマーに展示されているのは見たことがありませんが、ヴンダーカンマーは博物館の前身であり、現在でも博物館では古い、海外由来のものが珍重されることから、ヨーロッパから輸入されて、定着した切子は、ヴンダーカンマーにもふさわしいように思います。といっても、本物の薩摩切子や江戸切子はとても手が出ません。色はコバルトブルーではないし、模様も地味めですが、市松模様が良いです。

それにしても、ここ数か月はちょっと涼しすぎるようです。「寒い地方の方が暖房設備が整っているので、屋内は寒い地方の方が暖かい」とよく言われますが、ボストンで住んでいたアパートはセントラルヒーティングがあったので、暖かかったです。室内に限れば、ボストンの方が暖かく、関東の冬は厳しいと感じます。

2015年3月7日土曜日

英検1級



仕事を再開して2,3か月では何もたいしたことはできないし、かといって3月末で年度は終わってしまうのに、何もなさないでは、ブランクがあるにもかかわらず、採用してくれた会社にも申し訳ないので、英検1級を受けました。英検対策は、よくTimeやNews Weekを読むとか、エッセイを○本書く、などと言われますが、あまりやる気が起きず、BBCを通勤時間に聴いていたのと、単語を暗記し(ようとし)ただけでした。せめて過去問くらいは解けば良かったとは思います。しかも、受験会場が思いのほか駅から遠くて、部屋着に長靴という格好で、走って、ギリギリに会場に飛び込むという体裁の悪いことをしてしまいました。二次試験対策は、一次の結果が分かってから、少しやりましたが、そんなに直前に手を付けたので、点数は良くなかったです。

3年間もアメリカに住んで、仕事も勉強も育児もしないで、一つも賢くならずに帰国したのですから、冷静に考えてみればこれを取ることなど、特に自慢できるようなことではないと思いました。知人には、高校生や大学生の時1級に合格した人も何人もいるのですが、二次試験の会場には、小・中学生のような人もちらほら見られて、本当にすごいと思いました。英検の問題は、英語力だけでなく、社会・政治問題にも多少の知見がないと対処できないからです。そういった優秀な子供たちを見るにつけ、日本の教育制度は早く「悪平等」を廃止し、早急に初等教育からの飛び級制度や習熟度別クラスを導入すべきだと思います。半分以上が100点を取れるテストとか、学芸会では全員が主役とか、かけっこの順位をつけないとか、「みんな揃って一歩前へ」など、バカバカしいことこの上ないです。