驚異の部屋は博物館・美術館の原型なので、絵画も陳列されます。好きな絵を陳列すれば良いのですが、驚異の部屋に似合う絵と、そうでもない絵があると思います。驚異の部屋向きな絵とはどんなものか、考えてみました。気分の問題ですが、額装して、毎日目にするので、リトグラフとか、良い印刷のものだとうれしいと思いました。デジタルフォトフレームは論外です。美は、効率化とは両立しないものだと思っています。
博物画
驚異の部屋に定番の絵としては、まずは博物画があります。驚異の部屋の趣旨からしても、博物画は特にふさわしいものだと思います。鉱物画やキノコが好まれるでしょうか。ボタニカル・アートも博物画の一分野ですが、ルドゥーテのバラを好む層と、驚異の部屋愛好層はあまり重ならない気がします。天文図も人気があると見受けます。鉱物画やフィリップスの星座早見表などは、私にはとても手が届かず、持っているのは卵の図と、天文図1枚、W.Kranz作の夜の絵です。天文図は、デパートの文具売り場で額装してもらいました。地味な図版ですし、机の上にペラっと置いてあるだけではまるで有難味もないですが、額装すると見違えるようでした。野鳥の卵は、階段のタペストリーの隣に掛けています。J.J.グランヴィル
(誰にお勧めしているのか分かりませんが)、J.J.グランヴィルは驚異の部屋にお勧めのイラストレーターです。着想がユニークで、描写は精密、美しさとグロテスクが混在しています。絵は、版画(技法は不明)に、手彩色を施しているようです。ところどころはみ出しており、そんなにうまい塗り絵ではないですが、淡い色合いが良いです。ウォルター・クレイン、ミュシャ、エルサ・ベスコフ、エルンスト・クライドルフ等の一連の花の擬人化は、すべてグランヴィルが原点なのかと思っています。手持ちのスミレの絵は、2014年に購入し、そのまま放置していました。飾り用途の物を温存しているのは、実用品を飾っているのと同じくらい、意味のないことなので、安価な写真フレームを購入し、マット紙のみ、絵のサイズに合わせて誂えました。デパートで額装してもらう場合の1/3以下のコストで収まりますが、そこまで違うようには見えません。気に入ったフレームさえあれば、お仕着せでも良いのではないかと思います。
有名でないターナー、彗星
とはいえ、絵葉書も飾ります。整理してみたら、1000枚くらいはありそうだったので、飾らないともったいないと思いました。1枚目は、オクスフォードのウィリアム・ターナーのものです。同時代で作風も似ている、より有名なJ.M.W.ターナーとは別人で、区別するため「オクスフォードのターナー」と呼ばれます。ベルギーのシュルレアリスム
現代に近くなると、マグリットとデルヴォーが驚異の部屋的だと思いますし、驚異の部屋愛好家はマグリット好きが多いように思います。デルヴォーと驚異の部屋のつながりは、anatomical Venusだと思います。自分の好みで言うなら、マグリットやデルヴォーはすごく良いな、と思う作品と別に興味ないわと思う作品とが半々くらいです。シュルレアリスムの画家でも、マックス・エルンスト、ダリ、デ・キリコなどは驚異の部屋とはかけ離れています。マグリットやデルヴォーの原画を飾るわけには行かないので、絵葉書で満足しています。フレームはMOMAのロイド・ライトのデザインを翻案しているものです。来月、Bunkamuraのザ・ミュージアムで開催される「ベルギー奇想の系譜」展は多分にヴンダーカンマー的なのではないかと期待しているところです。
ところで、マグリットについて調べていて、すごいものを見つけてしまいました。「ルネ・マグリット 図録と画集に見る作品参照データベース」というサイトで、 マグリットやデルヴォーのあらゆる図録・画集を、サイズ、図版の数、内容を含め、データベース化し、検索できるようにしています。仕事で業務効率化を担当していることから、データベース構築に常に悩まされています。膨大なデータを含み、きれいに整備された、検索しやすいデータベースには心底憧れます。すばらしいデータベースだと思いました。
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