ルシール・アザリロヴィック監督『エヴォリューション』(2015年、フランス)を見ました。全米が泣いた超大作ではないため、そこまで話題にもなっていなかったようです。オフィスビルの一室を改装したような映画館で、ホームシアターよりは少し大きいくらいのスクリーンに映写されるのを、観客はみんな座椅子に座って見る、おもしろい場所で夜遅くに見ました。
少年とその母親、女性医師と看護婦のみが暮らす孤島で、少年たちが得体の知れない薬を飲まされ、よく分からない手術を施され、衰弱して行きます。10歳くらいの超絶美少年の二コラが見る世界は、歪で、気味の悪いことばかり起こります。
ヒトデの生態をヴンダーカンマー調に描いたホラー映画だと思います。銀色の魚や、イソギンチャク、海藻漂う青緑色の海や、デルヴォーやデ・キリコを思わせる海辺の街並みを、ランタンを提げて歩くシーン、ほの暗い病室など、美しい薄明かりの絵が満載です。また、赤いヒトデその他の海の生物、ホルマリン漬け、医療器具等のヴンダーカンマー要素も良いです。ただ、生理的嫌悪感を催す、気持ち悪い部分もたくさんあって、美しい部分と混ざり合ってマーブル世界を構成しています。見てしばらくは、食事の度に気分が悪くなることは間違いないです。アザリロヴィック監督のもう一つの長編映画、『エコール』は10年前に映画館で見たのですが、どちらも類稀なる変な作品です。
本作は、結婚記念日に夫と見に行きました。夫は「デートで連れて行ったら、その場で振られても文句は言えんで」と言っていましたが、結構気に入っていたようです。結婚した翌年から、毎年結婚記念日など全く頭になく、どちらかの家族がお祝いを言ってくれて始めて思い出すのが恒例でしたが、一度、このように思い出深いイベントがあると、しばらくは忘れそうにありません。以後、記念日は「不気味系のイベントがある日」ということにしたいと思います。
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