2013年9月29日日曜日

BSOのマーラー

ボストン交響楽団のコンサートに行きました。曲目はマーラーの交響曲第2番で、長いので休憩なしで1曲だけです。

マーラーをコンサートで聴いたのは初めてです。写真のとおり大編成で、他にハープ、オルガンなども使用され、演奏者が舞台裏に引っ込んで演奏する箇所もあります。演奏時間は約1時間50分です。

難しい音楽だと思いました。美しい部分もありますが、これだけ長く、大規模で芝居がかったところがあるのに全体に通じるストーリーのようなものがよく見えません。マーラー自身が楽章ごとに標題をつけていて、これを事前に読んでおかなかったのもいけないのかもしれませんが、この標題も妙に哲学的で難解です。バロック音楽ファンで、音楽に関しては保守的な私としては、コル・レーニョや小太鼓のバチで大太鼓の金属部分を叩くといった演奏法は「本当に必要?」と思ってしまいます。夫が「あれだけたくさんの楽器をそろえて、演奏時間も長いのにベートーヴェンの第九を超えていないのはちょっとねぇ…」と言っていて、なるほどと思いました。ただ、大規模だと、ゴージャスな気分にはなります。終わり近くにオルガンが加わるところがドラマチックで良かったです。

今回、残念に思ったことは前の客席に座っていた人が、演奏中10回くらい水を飲み、チェーンでできているアクセサリーをチャラチャラと鳴らし続け、演奏中にお化粧をするなどして、落ち着きがなかったことです。クラシック音楽に興味がないのに、無理やり連れてこられた様子でした。ほかにも、二人連れの片方が飽きてしまったのか、途中退席して帰ってしまったカップルを見ました。双方がよほどのクラシック音楽好きでない限り、マーラーのコンサートはデートで行くには向かないと思いました。

2013年9月27日金曜日

ニューオーリンズ旅行 お土産


フレンチ・マーケット

ロイヤル通り

高いアンティーク
ニューオーリンズのフレンチクォーターにはいろいろな店が立ち並びます。特にマッサージ店が目につきました。ヴードゥーという店名の店や、手相占いなどもありました。ガイドブックなどには必ず掲載されているフレンチ・マーケットにはガラクタ以下のものしかなく、ロイヤル通りのアンティークは高価でとても手が出ません。でも小さいおもしろいお店もあります。


ジャクソン広場横のお店で、レースのテーブルランナーを買いました。ボビンレースかどうかは分かりませんが、20世紀半ばのものだそうで、作りが丁寧です。新品ですが、長期間保管による染みがあったため、値引きされていました。漂白したらとれました。

ヴードゥー教や占いと関係があるのか、鉱石のお店もありました。私は石に魔力が備わっているとは到底思えませんが、とあるものを作るために鉱石を買いました。青い水晶のようなのはセレスタイト(天青石)です。透明度の高い水色で、結晶にもキズがなくてきれいです。赤、黄色より青や緑色のものにひかれます。お店はEarth Odyssey, French Quarter Gem & Lapidaryなどがあり、価格はそれほど変わりませんが、品揃えが少し違います。


英語の先生へのお土産にニューオーリンズ名物のプラリネを買いました。崩れやすいキャラメル味のアメの中にナッツが入っているお菓子です。とても甘いですが、アメリカのお菓子にしてはおいしいし、チョコレートと違って暑い時期もとけたりしないので、持ち運びもしやすいです。

2013年9月26日木曜日

ニューオーリンズ旅行 ニューカム陶器


 アメリカの製品は、デザインが大味で作りが粗いし、ヨーロッパに比べるとやはり洗練されていないなと思うのですが、アメリカン・アーツ・アンド・クラフツのものは独自の美しさと堅実さを兼ね備えていて、とてもすてきだと思います。アーツ・アンド・クラフツの工芸品は和室に置いても調和するような佇まいです。アメリカには各地にアーツ・アンド・クラフツ関連のものがあり、たとえばこの付近だとデダム陶器、シカゴはフランク・ロイド・ライトの建築(フランク・ロイド・ライトはアーツ・アンド・クラフツには分類されないものの、その流れを汲んでいます)があり、美術館でもよく関連のものが常設展示されています。その地特有のアーツ・アンド・クラフツの作品を見ることは、アメリカを旅行する際の楽しみの一つです。

ニューオーリンズにはニューカム陶器があります。ニューカム陶器の工房は1895年にはじまり、ニューカム大学を卒業した女性たちが陶器の装飾に携わりました。ルイジアナ州に見られる植物がモチーフとなっている装飾が多いそうです。色は青が中心で、他に緑や赤なども用いられています。全盛期にはアメリカやヨーロッパで数々の賞を取りましたが、時代とともに人々の好みが変化したので1940年に工房は閉鎖されました。ニューカム工房は一部別組織に継承されたものの、1950年代にはニューカム陶器は製作されなくなりました。現在では非常に高価なものとなっています。

「マダム・ジョンの遺産」というフレンチクォーター内の小さな建物で、ニューカム陶器の展覧会が開催されていました。





ニューカム陶器は青い色が美しいです。植物は写実的に描かれています。枝から布のようなものが垂れ下がっている木が描かれている花瓶があって、めずらしい植物だと思いました。


植物の種類は分かりませんが、たぶんこれだろうと思います。ニューオーリンズの美術館の近くで見たものです。

デダム陶器もオリジナルは非常に高価ですが、リプロダクト品は容易に手に入れることができます。ニューカム陶器は完全に製作が廃止されてしまい、リプロダクト品すらありません。せっかくこのようにすばらしい陶器を作っていたのに、「お金にならないから」という理由で廃止されてしまったそうで、もったいないなと思いました。

2013年9月25日水曜日

ニューオーリンズ旅行 美術館



ニューオーリンズ美術館は市立公園の中にあり、フレンチクォーターからは少し離れているのでバスか路面電車に乗る必要があります。美術館方面行きの電車は昼は運行していないので、バスに乗りました。でも、バス停にはバス停名の表示がないので、乗る前に運転手に美術館に行くかどうか尋ねました。「反対方面だよ!」と言うので、反対側のバス停で待っていたのですが、どうも様子がおかしく、元のバス停まで戻って待っていたら俄雨が降ってきて、雨宿りをしているうちにバスは行ってしまいました。結局、1時間ほども待ちぼうけを喰らった挙句にやっとのことで乗ったバスには、停車するバス停の表示も出なければ放送などもなく、運転手に「○○(バス停名)に着いたら教えてください」と言ったら、「○○?何それ?」と言われてしまいました。路線図を見せて、「ここに書いてあるこのバス停です」と言ったら教えてもらえましたが…

ヴィンターハルター
フランツ・グザヴィエ・ヴィンターハルターは19世紀ヨーロッパの王侯貴族の間で非常に人気のあった肖像画家で、イギリスのヴィクトリア女王、オーストリアのエリーザベト皇妃、フランスのウジェニーなどを描きました。エレガントで華やか、しかも少女マンガ風でもあり、一枚あるとその場が華やぐようです。チョコレートの缶の蓋に印刷されていそうな絵でもあります。

水晶宮

ロメジュリ
ニューオーリンズ美術館はハコは立派ですが、展示はそれほど多くありません。ボストン美術館の充実度が5段階で5とすれば、こちらは2くらいだと思います。今回、初めて見て興味を持ったのはジョセフ・コーネルです。



箱の中に入っていること、なんとなく詩的なこと、それにこのチマチマ感にひかれます。さり気ないようで、ちゃんと「アート」ですね。現代美術でも、ちゃんとこのように美しくて、繊細な雰囲気のものがあるのだなと、新鮮でした。



オグデン南部美術館にも行きました。平日というのに、近所の第二次世界大戦博物館は結構な人出でしたが、美術館はほとんど貸切状態でした。南部美術と言われてもあまりピンと来ず、例によってわけの分からない現代美術が多かったです。画像は、少しパウル・クレーを思わせる画風のウィル・スティーブンスのパステル画です。

2013年9月24日火曜日

ニューオーリンズ旅行 ジャクソン広場


教会内部

ロバ
ジャクソン広場はフレンチ・クォーターの中心地です。大通りには観光客向けの馬車があります。ロバに引かせている車もありました。馬車は普通に車道を走ります。見た目は良いのですが、ニューオーリンズの悪臭の原因の一つとなっています。大聖堂の両側にある建物は博物館で、ニューオーリンズの歴史に関する展示があります。


博物館に展示されていた一枚です。19世紀の作品だと思いますが、この時代の肖像画で少女が眼鏡をかけているのは非常に珍しいと思います。文学少女風でいいですね。


 博物館に展示されていたドレスは、襟のホワイトワークが見事でした。ジャクソン広場の横で、小さなお店を見つけました。ここはホワイトワークのベビー服やリネン類の専門店で、古いものと新しいものが販売されています。お店のウェブサイト

そこまでして食べないといけないものでもないと思う
ジャクソン広場と川の間に、オープンカフェのカフェ・ド・モンドがあります。このカフェは、ニューオーリンズの名物、ベニエ(四角いドーナツ)の元祖として有名ですが、店内の混雑と行列にめげて写真を撮っただけでした。ホットケーキミックスのように、「ベニエミックス」がどこのお土産屋さんでも販売されていました。なお、英語の先生は「ニューオーリンズに行ったらカフェ・ド・モンドに行ってみてね。でも、ベニエミックスはお勧めしません。買ってきて、作ってみたら、まずい小麦粉の塊ができて、食べられたものじゃなかった」と言っていました。




2013年9月23日月曜日

ニューオーリンズ旅行 薬局博物館

ニューオーリンズ薬局博物館はフレンチ・クォーターの一画にあり、実際に薬局として使用されていた建物に昔の薬や手術道具などが展示されています。






ソーダファウンテン
薬は通常の鎮痛剤などの他、香水、化粧品、麻薬、果ては毒薬やヴードゥー・パウダーまで展示されています。ヴードゥー教は、アフリカの宗教+カトリックのような、かなりあやしげな宗教で、かつてはこの地方でさかんに信仰されていたようです。フレンチ・クォーターには「ヴードゥー○○」をうたった店がいくつかありました。

とはいえ、飾ってあるのは瓶に入っている薬が中心なので、中に入っているのが本当にそれなのかどうかは確かめようがなく、解説を読みながらズラリと並んだ瓶を見る、というおもしろい体験ができます。アンティークの棚に古いガラス瓶が整然と並んでいる光景は絵になります。科学のようでエセ科学のようでもあり、瓶や家具は古いもの特有の雰囲気があり、不思議な空間で、うまく写真を撮れば何かの広告とか、本の装丁などに使えるのではないかと思いました。明るく、白く、清潔で無機質な、利用者の目に見える限りではあやしいとか不思議な要素など皆無な現代の薬局とは違います。


香水のコレクションです。私も少し香水瓶を集めているので、興味深く見ました。薬局博物館に展示されているような古いガラス瓶は、中古市場で驚くような高値で取引されているようです。規模の大きい美術館や博物館で、すぐれた芸術作品や珍しい展示品を見るのも大好きですが、こういった小さい博物館で自分の好みのものを見つけるのもまた、楽しいものです。





ニューオーリンズ旅行 テネシー・ウィリアムズ


夫が仕事でニューオーリンズに行くことになりました。「ぷんかも行きたければ連れてくで」と言ってくれたので、連れて行ってもらいました。ニューオーリンズは劇作家、テネシー・ウィリアムズが暮らした地で、『欲望という名の電車』などはニューオーリンズが舞台となっています。

ニューオーリンズは南国なので、9月半ばでも気温は連日30℃超えで、湿度は80パーセントという気候です。その上、繁華街であるフレンチ・クォーター地区はどこも悪臭漂い、やや「場末」という感じでした。大通りにヤシの木が植えられ、建物はロートアイアンを多用したスペイン様式で、ボストンとは雰囲気が異なります。


路面電車の「欲望」は現在は廃線になっていますが、同じ様式の路面電車が街中を走っています。歩く方が速いのでは、というくらい遅く、本数も少ないものの、おもちゃのようなかわいらしい外見で観光客に人気のようです。料金はどこまで乗っても乗り換えなしなら1.25ドルと安いです。1日パスは3ドル、5日パスは20ドルという謎の料金システムです。

ミシシッピ川(汚い)

テネシー・ウィリアムズはこの家に短期間、下宿していたそうです。ここで過ごした体験をもとに、Vieux Carre(フレンチ・クォーターという意味だそうです)が執筆されました。


これはテネシー・ウィリアムズが購入した家です。現在はアパートになっていました。


博物館で買った絵葉書です。中央はウィリアムズのお母さん、左の少女はお姉さんのローズです。二人は『ガラスの動物園』のアマンダとローラのモデルとなりました。ウィリアムズのお母さんは美人で、『ガラスの動物園』にも「私は昔、サザン・ベルで男性に人気があったのよ」という台詞があったと思います。お姉さんのローズは悲劇的な人生を送り、テネシー・ウィリアムズ自身もまた精神疾患に陥ったり、ゲイであったことなどから苦労が多かったらしいですが、この写真では無邪気な子供たちといった様子です。

2013年9月15日日曜日

リベア・ビーチ


Next Stop Wonderland(日本語タイトル『ワンダーランド駅で』)というボストンを舞台とした映画を見ました。主人公は男女1人ずつで、男性はニューイングランド水族館でアルバイトをしています。彼は海が好きで、海沿いを走る地下鉄ブルーラインで、よく海を見に行きます。海岸の風景がすてきな感じだったので、私も行ってみました。


ブルーラインはエアポート駅以降の駅が閉鎖中で、エアポートからシャトルバスに乗りました。Alice in Wonderlandを思わせるかっこいい駅名です。映画に出てくる風景は一つ手前のリベア・ビーチ駅の周辺が多いですが、駅名が良いのでタイトルにもなっているのだと思います。Next Stop Wonderlandということは、今いるのはリベア・ビーチ駅なのでいいのでしょうが、日本語タイトルはニュアンスが変わってしまっています。リベア・ビーチはアメリカ最古の公共海水浴場だそうです。夏が終わったので、空いていました。ゴミが少なく、きれいな海岸だと思いましたが、こちらでの評価は低いです。ボストン中心部から30分足らずで、公共交通機関で行ける海岸にしては、結構良いと思うのですが…



海を眺める屋根付きベンチが、映画の山場で使われていました。この見晴らし台はなかなか立派な屋根で雰囲気が良いです。




せっかくの海ですがあまり天気がよくありませんでした。カモメがたくさんいました。きゃあきゃあとうるさく鳴いて、海の中から貝をとってきては食べていました。仲間と取り合いをしていました。



貝殻を拾いました。大きくて白っぽい、二枚貝が多かったです。巻き貝はほとんどありませんでした。今日は最高気温が20度くらいまでしか上がらなかったので、泳ぐことはできませんでしたが海岸に遊びに行くと何をするわけでもないのに、つい長居してしまいます。

2013年9月10日火曜日

『ブロンテ姉妹』(映画)


【基本情報】
Les Sœurs Brontë,『ブロンテ姉妹』、1979年、フランス
監督 アンドレ・テシネ
出演 マリー・フランス・ピジェ、イザベル・アジャーニ、イザベル・ユペール他

【あらすじ】
シャーロット、エミリー、アンのブロンテ姉妹と、シャーロットとエミリーの間の男の子、ブランウェルの伝記映画。

【コメント】
ブロンテ姉妹の文学はイギリス的だと思いますが、この映画はヨークシャーの荒野を舞台としつつも、言語はすべてフランス語です。フィクションを書かれた言語と違う言語や舞台設定で演じるのはうまく演出してあればおもしろいですが、こういった伝記映画を別の言語でするのはかなり違和感があります。

ブロンテ姉妹の作品はシャーロットの『教授』とアンの『ワイルドフェル館の住人』以外は読みました。また、エミリー・ブロンテの伝記と、姉妹とブランウェルを題材とした小説も読みました。映画では、ブランウェルが家庭教師先の生徒の母親と恋愛関係を持ったことが中心となっています。これだけの大女優を揃えて、上映時間も約2時間の大作なのに、肝心の姉妹の生涯についてはあっさりしすぎている印象です。ブロンテ姉妹のことは詳細はあまり分かっておらず、田舎に住む貧しい三人が突如、ベストセラー作家になったという以外は大きな恋愛沙汰などもなかったようですが、よく研究され、伝記も多く出版されているので、創作に関することでもう少し映画の題材にできることがあったのではないかと思います。雰囲気はよく、荒野を背景とする美人姉妹は絵になります。天気は常に曇りか雨で、灰色のヒースの野が延々と広がる荒涼とした風景は『嵐ヶ丘』や『ジェーン・エア』の世界です。ほとんど白黒のような背景に何度か登場する馬車が、荒野に孤立した姉妹と外界を結んでいるようです。

イザベル・ユペールのアン・ブロンテ

2011年『ジェーン・エア』のミア・ワシコウスカ

イザベル・アジャーニは美人ですが、エミリー・ブロンテのイメージには合いません。ラファエル前派的な容貌で、抑えた演技のイザベル・ユペールが、三人の中では一番ブロンテ姉妹のイメージに近いと思いました。2011年の映画、『ジェーン・エア』のヒロインにも少し似た佇まいです。

画家のクリムトは「私自身は興味深い人間ではない。私について知りたいと思うなら、私生活について研究するのではなく、絵を見てほしい」という言葉を残しています。作家についても同様のことが言えるのかもしれません。画像拝借元