Case Histories(本)

本文と関係ありません
【書誌情報】
Kate Atkinson, Case Histories, Little, Brown and Company,2004

【あらすじ】
  1. 1970年 姉と屋外のテントで寝ていた4人姉妹の末子が失踪した。
  2. 1994年 父親の法律事務所でアルバイトをしていた若い美人が殺害された。犯人は黄色いセーターを着た特徴のない男で、被害者及び家族は他人に殺されるほど恨まれるような過去はなかった。
  3. 1979年 田舎での単調な生活にうんざりし、未来に希望の持てない若い主婦が斧で夫を殺害した。
 刑事を退職し、探偵の仕事をするジャクソン・ブロディは被害者の姉、父親、義妹から依頼を受け、3つの事件の犯人らの行方を探る。

【コメント】
日本でも最近話題の(?)作家、ケイト・アトキンソンの探偵小説です。主人公は過去に曰くのある、渋くて女好きのする人物ですが探偵らしい仕事はあまりしません。

それぞれの事件の扱いが異なっていて、犯人は思いも寄らない人物というケースもあれば、犯人探しはメインではなく、傷ついた被害者の家族の再生と新たな出会いとが中心となっているケースもあります。3つの事件に共通の○○などはありませんが、殺人や失踪事件に巻き込まれたために関係者たちの思いはしばしば事件当時まで遡り、現在とその当時と、その間の時を別々の登場人物の視点で行き来することにより、3つの家族と、ブロディ探偵自身の家庭の姿が浮かび上がってきます。物語が進行するにしたがい、3つの物語は緩やかに関連性を帯びてきます。

ラストはパズルのすべてのピースがあるべき位置に収まり、家族の死や失踪により痛みを負った人々は事件の真相解明により慰めを得ます。死者が戻ってくることはないけれど、ブロディ探偵の探偵としての仕事以上の力添えなどにより登場人物の置かれている状況は始まりよりも良くなります。少しご都合主義的な気もしますが、「物事がきちんと収まる」という終わり方は安心するものです。

アメリカでPage Turnerと呼ばれるような、読み始めるとやめられなくなる類の本だと思います。ただ、私はミステリーとか推理小説を読むと、無駄な買い物をしたり甘いものを食べ過ぎたときのような罪悪感を覚えます。こういう娯楽的な読書はほどほどにし、もう少し真面目で文学的な読書(そんなのしたことないですけど)をするよう、努めます。

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