夕暮れの光へのあこがれ

夕暮れを描いた絵画が好きで、画像をコレクションしています。

J.S.Sargent, 'Carnation, Lily,Lily,Rose'
サージェントの傑作の一つです。紫色の薄明かりはごく短時間しか持続しないため、サージェントは事前に絵の具とモデルの準備を整えてから毎晩描きました。絵は9月に着手したものの、途中で花が枯れてしまったので造花を使ったとのことです(出典)。何とも言えない微妙な色合いの光が幻想的な雰囲気を生んでいます。白いドレスの少女や、花々の繊細な花弁が空気中にとけてしまいそうな儚さです。

F.C.Robinson,'The Call of the Sea'


フレデリック・ケイリー・ロビンソンはイギリスの画家で、フランス象徴主義の画家、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌの影響を受けています。『青い鳥』などのイラストレーションを描きました。『青い鳥』は現在絶版だと思いますが、美しい絵本です。『青い鳥』といえばアンドレ・マルティのイラストレーションも捨てがたいです。下の作品で女の子がエプロンに仔羊を入れているのがかわいいです。

Henri Le Sidaner, 'Table beneath the Lanterns'
モネやルノワールなどと比べ知名度が低いですが、アンリ・ル・シダネルは印象派の画家で、夕暮れや夜の風景を好んで描きました。日本でも昨年展覧会が開催されたようです。サージェント、シダネルの両方に提灯が描かれているのは当時流行したジャポニズムの影響と思います。夕暮れには提灯がよく似合います。私はこの作品を見るとプルーストが「コンブレー」で書いた、祖父母と両親、スワン氏の集う食卓を思い出します。『失われた時を求めて』で使用人のフランソワーズが用意するのは、絵に描かれたような飲み物と果物だけではなく、食傷しそうなほど豪華な晩餐でした。

Sidaner
 これもシダネルです。ホイッスラーのようでもあり、日本画のようでもあります。夕暮れの戸外に丸い提灯や球体の庭用ランプを置きたいと思うのは、やはり「月を所有したい」という願望のあらわれでしょうか。

各地の色々な美術館で絵はそれなりに見てきたつもりですが、夕暮れの淡い光を表現している作品にはなかなか出会わないものです。サージェントが苦労したとおり、そのような光が持続する時間が短いせいもあると思います。私は絵は描けませんが、空が微妙な色合いになるとなるべく写真におさめるようにしています。

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