驚異の青い棚 2.カエルのフィギュリン


 ヴンダーカンマーにはびっくりするほどグロテスクなものや、奇妙なものも陳列されます。ベルリンのヴンダーカンマー博物館へ行ったときは、美しいものよりもそういったもののほうが多い印象でしたし、同美術館の、現代版ヴンダーの展示は、恐ろしくて入ることができませんでした。夫はそのコーナーも見ていましたが、かなり刺激的な展示だったそうです。自分で作るヴンダーカンマーは好きなものだけを収集すれば良いのであって、無理にホルマリン漬けや、よく分からない気味の悪いお面などを導入する必要はないと思っています。私には、磁器のカエルのフィギュリンが許容できるグロテスクの限界です。これよりもリアリティを追及している模型などは遠慮したいです。

ボストンで最後に行きたいと思ったのは、ボストン美術館、ボストン公立図書館と、ケンブリッジ・アンティーク・マーケットです。カエルは、ケンブリッジ・アンティーク・マーケットで買いました。ロイヤルコペンハーゲン製で、アメリカともボストンともまるで関係がないですが、夫がカエル好きで、ハンドルネームもカエル関連なので、買いました。手のひらに乗るサイズで、カエル自体は小指の先ほどの大きさです。これくらい小さければ、見方によっては「かわいい」とも言えるのではないかと思います。丸い石の青色がロイヤルコペンハーゲンらしいです。北欧的な、淡く冷たい青です。ロイヤルコペンハーゲンは、現在は普通のかわいらしい感じのフィギュリンが中心ですが、アールヌーヴォー期には、昆虫や爬虫類をモチーフにした、悪趣味一歩手前という作品も多く製作していました。かわいらしい、分かりやすい作品よりもグロい物の方が市場での価値は高いです。アンティークの北欧磁器はとても手が出ないですし、負け惜しみではなく、欲しくもないですが、このカエルにも、ごく薄いアールヌーヴォー調が入っている気もします。

ヴンダーカンマーには、Artificialia(人工の物)、Naturalia(自然の物)、Antiquity(古代の物)、Scientifica(科学の物)、Mirabilia(珍奇な物)、Exotica(外来の物)を陳列します。ヴンダーカンマーはヨーロッパが起源ですから、「外来の物」としてはアフリカの楽器やお面、アジアの仏像、中国の磁器などが好まれるようですが、日本から見れば、遠く離れたヨーロッパのものがむしろ「外来の物」です。

夫は私のコレクションにはだいたい無関心ですが、これは、「カエル、かわええやん」と言っていました。


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