2014年11月30日日曜日

驚異の青い棚 3.砂時計と水晶


祖母が初めてドイツに行ったとき、お土産に、と買ってきてくれたのが、小さな真鍮の砂時計でした。25年くらい前のことですが、子供だったから、ということを勘案しても、当時は今ほどはヨーロッパのものが簡単に手に入るわけでもなかったようです。祖母は、ほかにお土産としてプチポワンのついた指貫と、アメジストのクラスターを持ってきてくれたので、外国には、物語か絵本の中の世界のように、本当にすてきなものがあるのだなぁと憧れました。子供の時持っていたものの大半は、なくしたり、人にあげてしまったり、捨ててしまったりなどしたようですが、その時のお土産は、すべて残っています。砂は2秒くらいで落ちるので、まるで実用性のない飾りにすぎませんが、真鍮色と水色の砂の取り合わせがしゃれていて、気に入っています。

一緒に飾っている水晶は、透明度が高く、内部には少しイリデセンスが見えます。これは、祖母が特に好きな、スイスの絵本作家、アロワ・カリジェの絵本『フルリーナと山の鳥』に因みます。主人公の少女が、岩の間に水晶を見つけるシーンが印象的です。

祖母は高齢で、外国を旅行することもままならなくなってしまったので、今度は私がアメリカのお土産を持って、会いに行くことにします。昔いただいた砂時計をこんなふうに飾っていますよ、と言えば、祖母も喜んでくれるのではないかと思います。

2014年11月29日土曜日

驚異の部屋の片隅


英語版Wikipediaの、cabinet of curiositiesの記事には、珍奇の部屋、奇想の陳列室、ヴンダーカンマー、キャビネ・ド・キュリオジテについて、概ね以下のように説明されています。
  • ヴンダーカンマーは、持ち主による世界の支配を意図して作られたもので、世界の縮図、劇場を表現した。
  • 自然科学(似非科学含む)、地質学、民俗学、考古学、宗教、歴史的遺物などに関連するものを陳列した。
  • 現在では、cabinetという単語は収納家具の一種という意味でもあるが、元来は「部屋」という意味
  • 1587年に、ガブリエル・カルテマルクトはサクソン国王に、ヴンダーカンマーの必需品として「彫刻と絵、自国と外国の珍奇なもの、角や、羽など、動物にかかわる奇妙なもの」があると進言した。
  • 1632年にフランス・フランケンのヴンダーカンマーを描いた絵には、「絵画、キリスト教とギリシアの彫刻、熱帯魚、琥珀、貝殻、ミニチュアポートレイト、タツノオトシゴ、瓶入りの宝石、版画、硬貨、明朝の藍色と白の器、素焼きのオイルランプ」などが見られる。
  • 17世紀のヴンダーカンマーには、「動物の剥製、角、キバ、骨格標本、鉱物、考古学的なもの、小さく精密な彫刻、オートマタ、外来のもの、胡散臭いもの(一角獣の角と称して実際はイッカクの角など)」が陳列されていた。
都内の住宅事情では、よほどのお金持でない限り、一人一部屋+10畳前後のLDKが精いっぱいです。本来のcabinetは、戸棚ではなく部屋のことである、と言われても、専用の「驚異の部屋」を設けることは難しいです。でも、我が家にはテレビや応接セットがないので、その分のスペースである部屋の片隅に、ヴンダーカンマー的空間を作りました。

このキャビネットは、食器棚を意図して設計されているようです。中を見せるためには、側面もガラスになっているとか、内部に照明が取り付けられている方が良いですが、価格と用途を考えると、このくらいが適当でした。ヴンダーカンマーの説明に従うと、あらゆるものを、あまり系統立てることもなく、雑多なまま陳列して良いような感じです。私がここに積んでいるものは、だいたい、Wikipediaに挙げられている「ヴンダーカンマーの陳列物」のいずれかには該当するものと思います。


キャビネットの上には、昨年、夫がプレゼントしてくれた「驚異の棚」を設置しました。壁に掛ける方が好きですが、そうするとかなりの大穴を空けることになるため、少し不安定ですが乗せているだけです。中身は、アメリカ滞在中からあまり変わっていません。貝殻、鉱物、ガラス瓶、ヨーロッパの磁器などを陳列しています。標本瓶に入っている木の実は自分で拾ったり、食べたり(クルミ)したもので、ビーズの正多面体は自作しました。夫はふわふわした物が大好きなので、綿花を見て「これが一番ええね。ふわふわやね」と言っていました。

壁に掛けている卵の絵はリトグラフで、おそらく野鳥の図鑑の1ページだったのでしょう。北の空の方は、オフセット印刷で、これも古い天文関連の本の1ページのようです。額は、写真屋さんで買った既製品です。

フランク・ロイド・ライトの写真たてに、ベルリンで買った絵葉書を入れました。汽車?の前の部分に、数人の山高帽をかぶった男性が乗っていて、後ろには客車ではなく、空の荷車のようなものが連結されているという、シュールレアリスティックな写真です。全体が青系なのは、実際の色ではなく、モノクロ写真の加工か、変質でそうなったのではないかと推測しますが、却って超現実的な風景に合う色合いだと思います。機関車のようでもあるのに鉄道がなく、空の車の車輪が浮いているのが不思議です(合成かもしれませんが…)。この空間はきっと異次元につながっていて、いつの間にか、先の方がマグリットの「突き刺された持続」のように、あらぬ所から飛び出してくるに違いありません。「突き刺された持続」のマグネットは冷蔵庫に張っていて、絵葉書の妙な汽車がリビングの壁を通って冷蔵庫の扉から出てくる、ということにしています。





キャビネットの1段目には、鉱物と、貝殻などの海の物を陳列しています。奥行が深すぎて、後ろの方があまりよく見えないので、高さをつけました。葉っぱの模様が彫られている木製の箱は、来歴は分かりませんが、母が昔贈ってくれたものです。巻貝と二枚貝を収納しています。



2段目は、 クリスタル製品や、磁器、香辛料をしまってあります。香水瓶や試薬瓶は買ったもので、ジャムの空き瓶も使っています。十代の頃はポプリに少し興味があって、材料を集めたりしました。ポプリは1980年代に日本で流行し始めたそうで、そのころは材料を手に入れるのも一苦労だったと言いますが、現在は多くのデパートにアロマ関係のお店があります。先日、懐かしく思って「乳香や没薬は置いていますか」と訊ねたところ、アロマオイルを出されました。オイルではなく、樹脂はありますか、と言うと、お店の奥の棚から出してきてくれましたが、店員さんは、「今は、ポプリなどを作る人はあまりいないので、店頭には出していません」と言っていました。私は、アロマオイルを焚いて「癒し」を求めるよりは、乾燥したハーブやスパイスを調合して熟成させるポプリの方が、呪術などと関係もありそうで、あやしげな感じが好きです。ただ、なかなかうまい具合に調合するのは難しいし、アロマポットと好きなアロマオイルで手軽にできる方が、人気があるのかもしれません。


3段目は、青い鉱物を中心とした標本箱を収めています。標本箱は取り出さないと中身が見えません。

4段目は、ティーセットとデンマークのフィギュリンを収めました。驚異の部屋に陳列される彫刻は、ギリシア神話関連か、解剖学のヴィーナス、小型の骸骨など、おどろおどろしいものも多いです。こういった、かわいらしく小ぎれいなフィギュリンというのは、ヴンダーカンマーからは外れると思います。

食器以外のなにもかもが、まったく実用性がないし、こういうのを嫌がる人も多いと思います。これだけのガラクタを積んでいても文句を言わない夫に感謝しないといけないなと思いました。

2014年11月28日金曜日

【本棚】I.Murdoch, Bruno's Dream


本文と関係ありません

【書誌情報】
Iris Murdoch, Bruno's Dream,1969,Chatto & Windus

【あらすじ】
印刷会社を経営していたブルーノはそれなりの成功を収めたが、80歳を過ぎて、認知症になりかけている。浮気をしたことで最後まで妻の信頼を回復することなく、妻は若くして病死し、娘もまた、若くして溺死し、息子マイルズとは、彼の配偶者を拒絶したことから長く絶縁状態にあった。娘婿ダンビーと、あやしげな看護士のナイジェル、メイドのアデライードに介護をされていたところ、マイルズの妻とその妹も彼を訪れるようになる。一方、ナイジェルの双子の弟、ウィルと、アデライードは恋人関係にあったが、アデライードはウィルにそそのかされて、ブルーノの切手コレクションから、高価な一枚を盗もうとする。

【コメント】
40年間にわたり、全部で26冊の小説を出版したなら当然とは思いますが、マードックの小説は結構玉石混交と言うか、当たり外れが大きいです。長さがあっても、「大外れ」と思うこともあって、それに当たった時はがっかりしますが、それでも読み続けようと思わされるのがマードックの魅力だと思います。当たり外れとはいっても、私は「これはダメだ」と思った作品も、Goodreadsでの評価は高い、ということもあるので、単に自分には合わない、ということです。

Bruno's Dreamは私にとっては「当たり」で、図書館で借りて読んで、すぐにKindle版を買いました。近いうちに再読しなければ、と思います。認知症になりかかっている高齢の男性の回想が、繊細な優しい筆致で書かれています。アルツハイマー病の実際は、生易しいものではないでしょうから、ちょっときれいに書きすぎという気がしますが、文学としては優れていると思います。登場人物それぞれが後悔や悲しみ、鬱憤を抱えているものの、楽しかった思い出とか、抑えたユーモアと巧みに混ざり合って、きれいなマーブル模様になっているのが好ましいです。

クリックで拡大します

マードックの小説を全部読もうと思ったのですが、22/26冊読んで、The Message to the Planetを読み始め、200頁くらいで頓挫しています。未読の中で、An Accidental Manも読みにくいらしいので、果たして本当に全部読めるかどうか、自信がありません。そこで、道半ばであるものの、これまで読んだ作品を一覧表にしてみました。Aは、ユニークで個性が強い、ストーリーがおもしろい、意外性がある、でCはその反対です。登場人物の多寡や、魅惑者の登場の有無はだいたい客観的に評価できることですが、「キャラクターが個性的か」とか「ストーリーが巧みか」、「総合的におもしろいかどうか」などは完全に主観ですので、ご了承願います。
ついでに、村上春樹ビンゴの真似をして、マードック・ビンゴを作ってみました。もっと色々な種類を作らないと、使いものになりませんが、絶対に誰も遊ばないと思うので、お笑い種にしてください。

なお、英語版Wikipediaには本の内容の美しさや微妙さなどを完全に無視して、無味乾燥にネタバレだけをした粗筋が書かれています。これから読もうと思う方は、Wikipediaのあらすじは事前に読まないことをお勧めします。

2014年11月25日火曜日

驚異の青い棚 2.カエルのフィギュリン


 ヴンダーカンマーにはびっくりするほどグロテスクなものや、奇妙なものも陳列されます。ベルリンのヴンダーカンマー博物館へ行ったときは、美しいものよりもそういったもののほうが多い印象でしたし、同美術館の、現代版ヴンダーの展示は、恐ろしくて入ることができませんでした。夫はそのコーナーも見ていましたが、かなり刺激的な展示だったそうです。自分で作るヴンダーカンマーは好きなものだけを収集すれば良いのであって、無理にホルマリン漬けや、よく分からない気味の悪いお面などを導入する必要はないと思っています。私には、磁器のカエルのフィギュリンが許容できるグロテスクの限界です。これよりもリアリティを追及している模型などは遠慮したいです。

ボストンで最後に行きたいと思ったのは、ボストン美術館、ボストン公立図書館と、ケンブリッジ・アンティーク・マーケットです。カエルは、ケンブリッジ・アンティーク・マーケットで買いました。ロイヤルコペンハーゲン製で、アメリカともボストンともまるで関係がないですが、夫がカエル好きで、ハンドルネームもカエル関連なので、買いました。手のひらに乗るサイズで、カエル自体は小指の先ほどの大きさです。これくらい小さければ、見方によっては「かわいい」とも言えるのではないかと思います。丸い石の青色がロイヤルコペンハーゲンらしいです。北欧的な、淡く冷たい青です。ロイヤルコペンハーゲンは、現在は普通のかわいらしい感じのフィギュリンが中心ですが、アールヌーヴォー期には、昆虫や爬虫類をモチーフにした、悪趣味一歩手前という作品も多く製作していました。かわいらしい、分かりやすい作品よりもグロい物の方が市場での価値は高いです。アンティークの北欧磁器はとても手が出ないですし、負け惜しみではなく、欲しくもないですが、このカエルにも、ごく薄いアールヌーヴォー調が入っている気もします。

ヴンダーカンマーには、Artificialia(人工の物)、Naturalia(自然の物)、Antiquity(古代の物)、Scientifica(科学の物)、Mirabilia(珍奇な物)、Exotica(外来の物)を陳列します。ヴンダーカンマーはヨーロッパが起源ですから、「外来の物」としてはアフリカの楽器やお面、アジアの仏像、中国の磁器などが好まれるようですが、日本から見れば、遠く離れたヨーロッパのものがむしろ「外来の物」です。

夫は私のコレクションにはだいたい無関心ですが、これは、「カエル、かわええやん」と言っていました。


2014年11月24日月曜日

ボストン公立図書館見納め


ボストンの見納めなら、ボストン公立図書館は押さえておきたいです。サージェント、エドウィン・オースティン・アビー、シャヴァンヌの壁画があります。3人とも好きな画家です。サージェントは、死の直前に図書館の壁画を仕上げました。「宗教の勝利」という主題を描いているそうで、図書館のHPに解説があります。長くて読むのが面倒なので、私は読んでいません。



「アビーの間」の壁画も、見応えのある美しいものです。アーサー王伝説を描いているようで、図書館の公式HPには詳しい解説もあります。解説文はヘンリー・ジェイムズが書いているそうです。著名な作家のヘンリー・ジェイムズかどうかは分かりませんが、アビーはジェイムズと面識があったそうなので、「あの」ヘンリー・ジェイムズだとしても不思議はありません。

絵は天井近くにあり、照明も薄暗いので、写真はなかなかうまく撮れません。図書館が公開している写真がありますので、興味のある方はこちらをご参照ください。アビーは、サージェントとも親交のあった画家で、中世騎士物語や、シェイクスピアなどから題材をとった、横長のドラマチックな作品を描いています。



何度見ても本当に魅力的なシャヴァンヌの壁画です。これを見る度に、この図書館全体をポケットに入れて日本に持ち帰りたいと思いました。古代ギリシア的な連作壁画の中でも、「物理」と「化学」を描いたものが特に好みです。シャヴァンヌの壁画の説は、サージェント、アビーと比べると大幅に短いです。写真はこちらから見られます。



大画家の壁画のみならず、天井の照明の周りにぐるりと描かれた船の意匠や、うまいような下手なような微妙な人魚の絵もあって、細部もかわいらしいです。





2014年11月23日日曜日

MFA訪問、最終回


 ボストンで過ごした最後の週末は、ボストン美術館へ行きました。同美術館へは、アメリカ滞在中に10回近く行ったと思います。美術品の配置換えも頻繁に行われますが、だいたいどの絵がどこに展示されているかは記憶するくらい、行きました。ボストンで最も思い出深い場所と言えば、ボストン美術館とシンフォニー・ホールです。ボストンの観光名所は、そんなに多くはないです。


写真家として著名な、エドワード・スタイケンの油彩画です。スタイケンは、薄明かりの雰囲気のあるモノクロ写真をのこしているところ、若い頃には絵画を学び、絵画作品もまた、薄明かりを感じるものです。








改めて、撮影した写真を見直してみると、今回の写真は、孤独や夕暮れ、船出などをテーマとした作品が多かったです。あまり意識はしていなかったものの、自分がボストンを離れるので、少し寂しく思う気分を反映していたのだなと思いました。


ボストン美術館はエジプト美術のコレクションが有名ですが、私はサージェント等のアメリカ美術や、ヨーロッパの作品を中心に見ることが多かったです。収蔵作品のみならず、建物の雰囲気や、気取らない感じも大好きな美術館でした。ありがとうございました。

2014年11月22日土曜日

驚異の青い棚 1.アクアマリン



25の収納場所がある壁掛けキャビネットは、アメリカから持ち帰りました。日本ではアメリカよりも確実に狭い家に住むのに、帰国する段になって家具を増やすのは、得策とは言えません。「こういうのは日本で買えないから」という弁解もダメな人感が満載ですが、昨年買ってもらった、驚異の棚に使っているキャビネットがおおいに気に入って、買ってしまいました。コレクションは、テーマを決めないと限りなく拡散しそうなので、青いものを中心に集めます。ブログのタイトルはこれに由来します。壁に穴のあけられない賃貸住宅なので、靴箱の上に乗せました。


最初の部屋に収納したのはアクアマリンです。アクアマリンの和名は藍玉というそうですが、「藍」というともっと濃い、サファイアのような色をイメージします。Wikipediaには、「市販品の多くは緑色から黄褐色の緑柱石を熱処理した」と記載されています。流通している宝石のほとんどは、何らかの処理を施されているそうなので、これも熱処理されていても不思議はありません。染色やアクアオーラなど、一目で分かる加工は好きではありませんが、それも好みの問題ですし、私は人工的な処理についてはあまり気にしていません。

アクアマリンは名前もきれいで、好きな宝石です。このアクアマリンはほとんど透明感がなく、色も淡いため、宝石として加工されるようなクオリティではないと思いますが、少し霞のかかった空のような、きれいな色です。一つ一つは小さいので、まとめて瓶に入れています。ホテルの朝食に出たジャムの瓶です。ボストンで最後に滞在したホテルで、環境保全の名の下、チープな設備に終始した居心地の悪いホテルで、朝食もおいしくありませんでしたが、ジャムだけは良かったです。5泊もしたので、悔し紛れに瓶をためて持ち帰りました。ホテル滞在が3週間以上にも及び、荷物が多くて大変なのに、夫がぬいぐるみを持ち歩くので、「あなたがそんな無駄なものを持ち歩くなら、私だって」と対抗意識を燃やし、重くてかさばる、他人から見れば廃棄物でしかないガラス瓶を10個ほどもスーツケースに入れていました。コルク栓付小瓶に入っているのは、透明度が高い、六角柱のアクアマリンです。白く濁ったほうが空のようだとすれば、透明度の高い方は氷のようだと思いました。

ガラクタ類を置いている玄関の靴箱

2014年11月18日火曜日

ワシントンDC旅行 国会図書館


 アメリカの国会図書館は、国会議事堂の裏にあります。石造りの建物で、さすがの堂々たる風格です。





内部も豪華絢爛で、圧倒されます。金色を多用した、ヨーロッパ調の装飾です。天井にはアカデミズム的な、女性の姿の寓意画が多く描かれています。図書館をここまで装飾する必要があるのだろうか、とも思ってしまいますが、国の威信を見せつけるにはこれくらいする必要があるのかもしれません。日本では、図書館の建物は単なる本のイレモノで、無機質な箱であることが多いですが、アメリカの大都市の図書館は、建物や壁画が美しく、観光名所となっていることもあります。ボストンの図書館もすばらしいです。アメリカにかぶれて、何でもかんでもアメリカの方が良いのだ、などと言う気はありませんが、日本の公共建築物はもっときれいな感じにしても良いのではないかと思います。それも、欧米調をそのまま輸入するのではなく、かと言って曲線のガラス張りとかコンクリート打ちっぱなしの(自粛)な感じにするのでもなく、日本の街並みに合うような、美しい建物が必要だと思います。



2014年11月12日水曜日

ワシントンDC旅行 ナショナルギャラリー

イーストマン・ジョンソン「スイレンの採集」1865年

 ワシントンDCのナショナルギャラリーはスミソニアン美術館群の一つではないのですが、外せない観光名所です。イーストマン・ジョンソンはアメリカの画家で、メトロポリタン美術館の設立者の一人です。風俗画を得意としたほか、リンカーン大統領やナサニエル・ホーソーンらの肖像画をのこしています。スイレンと、水鏡の表現がなんともいえず、魅力的だと思います。

うまいねぇ
模写をしている人が結構いました。絵画同好会か、学生ではないかと思います。この人が模写をしているのはサージェントです。

ロドヴィーコ・カラッチ「アレクサンドリアの聖カタリナの夢」1590年

フィッツ・ヘンリー・レイン「ペノブスコット湾の夕暮れ 木材スクーナー船」1863年

ファン・デル・ニール「橋のある月夜の風景」

ジャスパー・クロプシー「戦争の心」1851年

恒例の薄明かり。美術館に行くと、薄明りコレクションをします。今回はハドソン川派の薄明かりの絵が印象的でした。

ジャスパー・クロプシー「ハドソン川の秋」1860年

これぞニューイングランドの風景、という一枚だと思います。雲の影から太陽が顔を出して、水面に反射し、キラキラしている感じ、紅葉、水が澄んだ、小さな池など。3年間住んでみて、ニューイングランド地方は風景がきれいだと思いました。車に乗っていると、あちこちにきれいな湖が見られます。日常生活に使う道具や設備、食事などの点では日本の方が優れていると思いますし、生活がしやすいですが、湖のある景観は、帰国して懐かしく思うことの一つです。


ジョン・ウォード・オブ・ハル「スワン号とイサベラ号 北の捕鯨」1840年ころ

今回特に気に入った作品です。北の海に船が描かれている絵ならたくさんある気がしますが、鳥、アザラシ、シロクマ、セイウチ、イッカクなど、描かれている動物が楽しげで、絵本のようでかわいらしいです。動物たちが、1匹ではなく、すべてペア以上で描かれているのが良いです。物語を感じさせる絵は好きです。日本でも人気のあるイラストレーター、アンジェラ・バレットの『氷の宮殿』を思い出しました。ジョン・ウォード・オブ・ハルは、イギリスの画家で、船の絵を多く描いています。

ビニールクロスで台無し

普段は、美術館のお土産は、絵葉書とマグネットしか買わないのですが、この先アメリカの美術館に行くことは当分ないでしょうから、装飾用タイルを買いました。Weaver Tileという現役の工房の作品で、アメリカン・アーツ&クラフツ調のタイルを制作・販売しているようです。こんなタイルを、たとえば台所に一列張ってもすてきでしょうが、賃貸住宅ではそうも行かないので、1枚だけです。青緑色に白抜きで、かっこいいウサギがレリーフになっています。地域、国によって特徴が出やすいのは、絵画よりも実用品のデザインではないかと思っています。お土産にするなら、その国の特徴的なデザインのものが良いのではないでしょうか。アメリカ的であり、美しいデザインはアメリカン・アーツ&クラフツと、フランク・ロイド・ライトだろう、と思います。親戚やお友達へのお土産は、FLWグッズ中心でした。アーツ&クラフツ仕様のものは、オリジナル品は入手しにくいですし、リプロダクト品も流通は多くありません。ナショナルギャラリーのミュージアムショップで思いがけず手頃なものを見つけて、うれしく思いました。日本で借りた家の靴箱の上に飾り、毎日目にしますが、日々眺めるにつけ、なかなか良い買い物をしたものだ、と自己満足に浸っています。ヨーロッパ調のゴージャス・エレガントな装飾とは方向性が異なり、やや「侘びた」(その心はよく分かりませんが)ような雰囲気があって、日本の家に置いてもあまり違和感を持ちません。


2014年11月8日土曜日

ワシントンDC旅行 スミソニアン自然史博物館



ワシントンDCのスミソニアン博物館の中で、まずは、前回行けなかった自然史博物館へ行きました。自然史博物館は、スミソニアンの中でも、航空宇宙博物館に次ぐ人気だそうです。美術館や歴史博物館よりも科学系の展示の方が人気があるというのは興味深いことです。

剥製、恐竜(改装中)、生きた昆虫などの展示がありますが、見たかったのは鉱物です。ハリー・ウィンストンが寄贈したホープ・ダイアモンドがありますが、その前は混雑し過ぎていて写真は撮っていません。

研磨された大きな宝石は他にもいくつかの展示がありました。大きな原石はすごい!と思う一方、あまりにも大きな研磨品は、貧乏人にはリアリティがまるで感じられず、偽物ぽく思えてきます。現代の人工宝石は、大半の人には身につけているところを見ただけではそれと分からないくらい精巧にできていると思うので、こうなると、高価な本物を着ける意味は何だろう?着けている本人の自己満足以外に何かあるのだろうか?と思えてきます。



博物館級の、珍しい鉱物標本は垂涎ものでした。イリノイの青い蛍石、欲しいです…オパールやトルマリンもきれいでした。銀星石は、緑とグレーのものしか見たことがなかったのですが、青いものを初めて見ました。このゾーンは、女性はきゃあきゃあと言いながら写真を撮りまくり、連れの男性に「遅すぎるよ!」と言われているケースが多くて、おかしかったです。私も夫に言われました。

鉱物コーナーの最後には、ちゃんと鉱物専門のミュージアムショップが用意されています。お客さんが多くて、回転も早いのでしょうが、品揃えは普通で、特段珍しいものはありません。




剥製は好きではないし、生きた昆虫の観察などはむしろ尻尾を巻いて逃げ出したいくらいなので、鉱物コーナー以外はささっと横目で見て終わりました。