ラリックの化粧瓶



今年30歳になります。この年齢になって、結婚して○年経つのに子供がいないとか、就業していないとか、帰国したら30過ぎでなんの資格も特技もなく再就職を探さないといけないとか、いろいろ思うところはあります。そんなことを考えているだけでは前に進めないし、めでたい気持ちはありませんが、とりあえず散財の口実にはなります(なりません)。

ラリックの小箱(私は空のままにしておくつもりですが、パウダーケースとしてデザインされているのだと思います)を買いました。まわりにはアヒルが一周しています。白鳥の湖なら優雅ですが、アヒルの池だとユーモラスです。ボストンのパブリック・ガーデンはロバート・マックロスキーの『かもさんおとおり』に因むアヒルの銅像があります。銅像系観光名所のご多分に漏れず、結構な「がっかり観光地」であると思いますが、何かの記念日などがあると、そのコスチュームを着せられ、いつも観光客で賑わっています。

パブリック・ガーデンのアヒル(生きている、銅像ではない)
瓶はウォルトのJe Reviensという香水のもので、もともとはラリックが同じくウォルトの「Dans la Nuit(夜に)」という香水のためにデザインしたようです。

ラリック「ダンラニュイ」

ボトルの大きさ、色、星の数、栓のデザインに何種類かあります。上の画像のバージョンは東京都庭園美術館の香水瓶の展覧会で展示されていました。星空にひかれ、展示の中でも私はこれが特に好きでした。でも、青い色のボトルは数百ドル~数千ドルする好事家向けで、とても手が出ません。私が買ったのは、おそらく20世紀半ば頃に普及していた、はるかに安価な瓶です。色からしてまったく「夜に」という感じではないし、星の数も少なく、オリジナルの雰囲気がかなり薄まってしまっていますが、別物と思えばこれはこれで良いものです。

2009年に新美術館でラリック展を見て、翌年には庭園美術館の香水瓶展に行きました。新美術館のラリック展も充実した展示で、すばらしいものでしたが、香水瓶展の方が強く印象に残っています。やはり建物の効果なのだと思います。庭園美術館にあると、展示品が3割増し良く見える、と言われているようです。美術館へ行って幸せな気分になった後、きれいな庭を散策したり、外観もすぐれた建物を見ると展覧会のことがしっかりと記憶に焼き付いて、「あの展覧会はどこの美術館で見たんだっけ?」ということがなくなります。

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