2013年6月6日木曜日

Carnation, Lily, Lily, Rose(本)


【書誌情報】
Hugh Brewstar, Carnation, Lily, Lily, Rose, Kids Can Press, 2007

【あらすじ】
5歳のケイト・ミレーは、両親、弟、叔母さんと大きなお屋敷に住んでいる。お父さんは画家で、家にはエドウィン・オースティン・アビーらの芸術家が集まった。ある日、サージェントさんがやってきて、夕暮れの百合の花の絵を描きたいので、ケイトにモデルになって欲しいと言う。茶色い髪の毛のケイトはサージェントさんの要望に従って金髪のカツラを被らないといけないし、長時間同じ姿勢で立っているのも辛かったけれど、誇らしくもあった。でもある日、ドリーとポリーのバーナード姉妹がやってきて、サージェントさんはケイトではなくバーナード姉妹をモデルに絵を描くことに決めた。

【コメント】
本書は児童書で、5歳のケイトがサージェントの「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」の製作について語ります。フィクションの部分もありますが、関連するサージェントのスケッチやカリカチュア、ミレー家に集う人々の肖像画、当時の写真などを全ページに配置し、大作の製作過程をまわりの人々もわくわくしながら見ている様子が楽しいです。

サージェントは、ボートで川下りをしていたときに見かけた「夕暮れの薄明かりの下で、子供たちがバラの茂みの間に紙の提灯を灯している」光景を描きたいと考えます。ミレー家の庭で絵を描くことにし、ケイトにモデルとなるよう依頼します。提灯を入手し、叔母さんが白い服を作ってくれ、夕方になるとケイトはポーズをとりました。でもケイトはポリーとドリーのバーナード姉妹に交替させられ、がっかりします。しかしやさしく配慮のある両親や叔母さん、まわりの大人に慰められます。サージェントはミレー夫人やケイトの肖像画も描きました。

サージェントは絵の製作に2年を費やしました。昼間のうちに提灯を吊り下げ、百合の鉢をセットし、カンヴァスを持ち出し、白い服のドリーとポリーがやってきます。それから芝生の上でテニスをして待ちます。そして日が暮れるとすぐにテニスの道具を放り出し、毎夕10~20分描いたそうです。ミレー氏は娘に「サージェントさんは提灯を灯すと、ピンクや赤の光が際立つ、特別な時間を捕らえようとしているんだよ」と言います。絵は8月に着手しましたが、寒くなると花がしおれてしまったので、近所の人からまだ咲いている花を買ったり、古い帽子の造花を使ったりしました。絵が完成するとケイトはお父さんと展示を見に行き、中から光を発しているかのように、絵が柔らかく光っていると思います。「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」という絵のタイトルも、ケイトにとっては特別なものでした。

子供向けのかわいらしい本ですが、いろいろな画家が登場するのがおもしろく、製作の様子も生き生きとしています。


フランシス・ミレーの作品です。アルマ・タデマに似ています。アルマ・タデマも本書にチラッと顔を出し、ケイトの肖像のスケッチも描いています。ミレーはタイタニックの事故で亡くなりました。

Alma Tadema

 エドウィン・オースティン・アビーは本書では「ネッド」と呼ばれています。おもしろくて親切な人柄だったようです。彼もまた、ボストン公立図書館の壁画を描いています。

Edwin Austin Abbey
少女時代の楽しい思い出と、芸術的な人々との出会いをスクラップブックにしたようなすてきな一冊で、子供の頃こんな本があったら良かったのに、と思いました。ボストンに関連のある画家が登場するのもうれしくて、amazonで注文しました。

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