2013年6月30日日曜日

ヨーロッパ旅行 コペンハーゲンの街並み

図書館のカフェ。川を眺めながらお茶を飲みます
対岸の眺め
コペンハーゲンは大きな街ではなく、気軽に街中を散策できます。ベルリンは新旧の建物が入り混じっているのがおもしろく、ウィーンはときどきユーゲント・シュティール調の建物があるのが素敵と思いました。コペンハーゲンは直線と、整然と並んだ窓が魅力的です。左右対称、規則性、統一感というのはやはり落ち着かせる作用があります。吊り下げ式の街灯もいいなと思いました。ハンマースホイの絵で見たことがあるような風景が多く、歩いているだけでも楽しかったです。

コウノトリの噴水
デンマークのコウノトリといえばアンデルセン童話の「コウノトリ」があります。尻切れとんぼのような変な話です。

クリスチャンボー宮殿の一部。大きすぎて全貌は撮影できません
クリスチャンボー宮殿の玄関
時間があまりなかったので中には入りませんでしたが、クリスチャンボー宮殿はきれいなところでした。デンマークの家では、夜でもカーテンを閉めないことが多いそうです。窓はよく磨かれています。窓ガラス、外から見える室内の掃除が大変そうだと思いました。

砂場で遊ぶ子供たち

2013年6月29日土曜日

ヨーロッパ旅行 コペンハーゲンの美術館


コペンハーゲンでは国立美術館とヒアシュプルング・コレクションに行きました。雨の日だったので屋外の観光には向かず、ちょうど良かったです。


けん玉のような遊び。大学の頃、奇術部の人たちがよく庭で練習していました。燕尾服の紳士がこんなことをして遊んでいるのがおもしろいです。


大学といえば、夫曰く「これ、大学の食堂でよくあるな。『うわ、あいつ一人ぼっちで食べてるぜ』『ダサいわ~』ってところやな」

夕暮れの絵が好き

「猫拾った」
猫も少年もかわいいです。この彫像が置いてある部屋には他にもいくつかの彫像と、画用紙、画板、鉛筆が用意されていて誰でも自由にスケッチできます。デンマークは車道と歩道の間に自転車道があり、前輪に乳母車を取り付けて走っている自転車をたくさん見かけました。宮殿や庭にも先生に引率されている子供たちのグループがいました。子供たちが幸せそうで、大切にされている国という印象を受けました。電車の窓から遠足の子供たちが手を振ってくれたので、夫と一緒に手を振ったら、先生も手を振り返してくれました。


デンマーク国立美術館で特に印象的だった作品です。アブラハム・ヤンセンスという画家による「無常の寓意」という一枚です。憂わし気な美人が着ている胸が丸出しなドレスからして独特ですし、右手に顔のある三日月、左手にエビを持っているのも謎です。ドレスとつながっているようでもあり、大きな袋のようにも見える金色の布も実態がよく分かりません。月は満ち欠けすることから「無常」の象徴だろうと思いますが、なぜおじいさんが驚いているような顔なのか、そしてエビは何を意味しているのでしょうか…??神秘的で魅力的です。

 フラゴナールの「ぶらんこ」に似ているけれどそれよりは上品な一枚です。こんなに高い所からぶらんこを吊るしたら大きく揺れて遠くまで行けそうです。空の色がきれいです。

ヒアシュプルング・コレクションは水曜は無料で入館することができます。上の作品は美術館の目玉です。なかなかどっしりとした体格の女性です。後ろ姿で顔も半分以上隠れているのに、なんだか物語がありそうな雰囲気の作品で、帰りの飛行機である乗客が読んでいた本の表紙に使われていました。他はデンマークの画家、クロイヤーのコレクションが充実しています。

 クロイヤーの空の表現が独特です。海の絵が多かったです。昼間の海は子供たちが海水浴をしている様子を、夕方の海は大人が海辺を散歩しているところを描いています。

撮影者が写り込んでしまいましたが、美術館の
私の
 ヒアシュプルング・コレクションには私が持っているのと同じフィギュリンがあってうれしくなりました。ロイヤルコペンハーゲン製です。

2013年6月28日金曜日

ヨーロッパ旅行 フローラ・ダニカ、ローゼンボー宮殿

温室内は入れませんでした
 フローラ・ダニカはロイヤル・コペンハーゲンがロシアの女帝エカテリーナ2世のために製作し、現在でも世界最高の食器といわれているようですが、食器の話ではなくコペンハーゲンの植物園の話です。なお、ちょうど今の時期には植物園の付属博物館、ローゼンボー宮殿、国立美術館で「フローラ・ダニカ」と題する特別展が開催されていました(私は行きませんでしたが)。温室の建物がきれいでした。




デンマークには2日ほど滞在しただけですが、デンマークの人はニコニコして親切な人が多いです。散策していてすれ違ったおばあさんに「むこうの池にカメがいますよ」と言われました。そしてみんな英語を流暢に話します。私は英語の教員を志したこともあるので、デンマークの英語教育には興味があります。


その後ローゼンボー宮殿とそのお庭に行きました。



コペンハーゲン国立美術館所蔵
内部の撮影には入場料とは別にお金を払う必要があったので写真はありません。今回の旅行でベルリンのシャルロッテンブルク宮殿やウィーンのシェーンブルン宮殿にも行きましたが、それらの宮殿と比べるとローゼンボー宮殿は小規模です。古く、凝った作りの宮殿でした。インテリアの雰囲気がドイツ・オーストリアとは違う感じなのもおもしろかったです。


2013年6月27日木曜日

ヨーロッパ旅行 ハンマースホイ



コペンハーゲンを訪れた第一の目的はハンマースホイでした。最初にハンマースホイの絵を目にしたのは2007年頃で、見た瞬間大好きになりました。白黒に近いような色彩で、静かなのに甘美な雰囲気もある絵が印象的です。オンラインで画像を収集しましたが、画集は高価だし、そこまで有名な画家ではないので日本に来ることはあまりないだろうと思いました。2008年に西洋美術館で展覧会があったときには、夢かと思うほどうれしかったです。その時は前売券を買い、懸賞でもチケットが当たったので会期中に二回、展覧会に行きました。普段懸賞に応募したりしないのにたまたま当たったのもご縁のように感じました。

顔が判別できないよう縮小しています
ハンマースホイに憧れ、時々「デンマークに行ってみたい」と言っていたので、ヨーロッパに旅行するとなったとき夫が「デンマークも行こか」と言ってくれました。デンマーク国立美術館にはハンマースホイの部屋がある他、その隣のヒャシュプルング・コレクションにも数枚あります。

夫が「行こうよ」と言ってハンマースホイが住んでいた家も連れて行ってくれました。中はおそらく人が住んでいるので入れませんが、中庭から写真を撮ることができます。



ほぼハンマースホイが住んでいた当時のままのようです。


隣のお家のお庭が見えていて、きれいでした。通りを隔てた所にはこの家に住む前のハンマースホイの住居があります。



おお、絵と同じ風景だ、と感動しました。絵のように音がまったくないような世界、というわけではありませんが静かな所でした。ここへ来ることができて本当に良かったと思いました。コペンハーゲンはパリやウィーンなどと比べると観光都市ではありませんが、一生に一度は行ってみたかったのです。デンマークまで付き合ってくれた夫に感謝します。


散々な体験


ベルリン~ウィーンの飛行機の窓から撮影
 ヨーロッパへの飛行機は格安航空券でカナダ経由で行きました。カナダからの飛行機は夜9時に出発する予定でしたが、飛行機の整備不良で飛びませんでした。せまくてうるさい機内でそのまま4時間待ち、夜中の1時に「修理ができないので、今日の便はキャンセルになります」と言われ、カナダの空港内に戻り、1時間ほど長蛇の列に並んで翌日の便の再予約をし、航空会社に近くのホテルに宿泊するよう、言われました。ホテルのバスを30分ほど待ち、就寝は朝3時でした。すごく寒いホテルでなかなか眠りにつけませんでした。そのときは眠くてぼんやりしていたため気づかなかったのですが、翌朝、冷房の設定温度が15℃になっているのを見つけました。翌日は「朝9時の便だから7時に来てください」と言われ、ホテルで3時間寝て空港に到着すると「出発は11時に変更」とのことで、また空港で4時間待ちました。食事は前日の晩~出発後まで出ず、多くの乗客は夕食と朝食を食べられなかったことになります。目的地への到着は予定より14時間遅れ、その日も深夜3時にやっと就寝できました。午前に到着し、初日から午後一杯は観光ができるはずだったところ、その間ずっと飛行機トラブルに巻き込まれていたので半日減ってしまいました。

整備不良自体は一定の確率で起こることのようなので、仕方ないとは思います。でも、機内や飛行場で8時間も待たせるというのは必要なこととは思えません。せめてホテルで待たせてくれれば良かったです。また、再予約は航空会社にとって必要な手続きであり、ほとんどの乗客が翌日の一番早い便に乗りたいことは明らかなので、航空券を回収して航空会社側で手続きすれば良いことで深夜に行列させるのは不合理に思えます。近隣のホテルへの振り分けももっと早くできたはずだと思いますし、ずっと空腹のまま待たせるのではなく食べるものを配ってくれても良かったのではないかと思います。隣の席の人が「この航空会社の対応は最悪だ。以前もフライトがキャンセルになったことがあったけど、こんなにひどくなかった」と言っていました。

私も含め、誰もが怒り出したい気分だったと思いますが、怒る人はいなくて、たくさん乗っていた子供たちも驚くほど良い子だったので、その点では気分良く旅することができました。夫はこんなときも温厚で、漫画を描いて元気付けてくれました。


2013年6月17日月曜日

旅行準備



10日間ほどヨーロッパに旅行します。ヨーロッパは物価が高く、買食いも好きではないのでお菓子を焼いて持参することにしました。
  • フルーツケーキ
  • クッキー2種類(レモン、ココア)
  • ビスコッティ
を作りました。手荷物に入れると空港で没収されるおそれがあるのでスーツケースに入れて運びます。朝食がないホテルで役立つでしょうし、これでかなり節約できるはずです。ヨーロッパ旅行など一生に何度もできることではないので、ここ半年くらいはなるべく節約を心がけ、「ヨーロッパ旅行のために」と思っていましたが、旅先でもあまり食事にお金をかけるつもりはありません。とはいえ、ウィーンに行ったらザッハトルテは食べてみたいです。

ガイドブック。全ページこんな感じで文字ばかり。
ガイドブックは図書館で借りました。英語のガイドブックは写真がほとんどなくて地図も少なく、せいぜい二色刷で見にくいです。ただでさえ英語を読むのが苦手なのに、小説よりも小さいフォントでびっしり書かれているので、必要な情報を得るのに苦労しました。他に、「地球の歩き方」のウェブサイト、tripadvisor、google地図、旅行先の観光局や交通局のウェブサイトなどを参照しました。英語は通じるようですし、今回は治安も問題ないところを旅行しますが、個人旅行ゆえ多少は不安があるので詳細な日程表を作りました。

私はまったく文化的でなく読書、音楽鑑賞、映画観賞などを特に多くしているわけでも、語学などの教養があるわけでもないのですが、ヨーロッパに対する浅はかな憧れがあります。堪能してきたいと思います。

2013年6月13日木曜日

Human Croquet(本)

Frank Cadogan Cowper, 'Rapunzel'
【書誌情報】
Kate Atkinson, Human Croquet, Picador USA,1997

【あらすじ】
フェアファクス家はエリザベス1世の時代、広大な地所と屋敷を持ち女王自身が宿泊したこともあった。 領主はどこからかやってきた謎めいた娘と結婚するが、夫人は出産後、森に消えた。時代が下り、1960年代になると同家はすっかり没落していた。末裔である16歳のイソベルの父は第二次世界大戦の英雄だが戦後は田舎に埋もれ、母はイソベルと兄のチャールズが幼い頃に駆け落ちしたと聞かされていた。母の失踪後、父も外国に行ってしまい、兄妹は魔女のような父方の祖母と伯母に育てられたが、父は7年後に後妻を連れて戻ってきた。隣家の家庭的で親切なバクスター夫人は両親のない二人を援助してくれたが、夫人は暴力的な夫によるDV被害にあっていた。ずっと母に戻ってきてほしいと願っていたイソベルが16歳の誕生日を迎えたときから、タイムスリップなど奇妙な現象が起こり始める。

【コメント】
ケイト・アトキンソンはジャクソン・ブロディ探偵シリーズ(既刊4冊)の他、短編集Not the End of the World(『世界が終わるわけではなく』)等の著作があります。ミステリと短編集ではずいぶん雰囲気が違いますが、本書はミステリとファンタジーと現実が入り混じった、不思議というよりも「不思議ちゃん」な小説です。

おとぎ話、ギリシア神話、伝説、デカメロンなどへの言及が随所に見られ、シェイクスピア戯曲の台詞からの引用も多いです。イソベルの生きる20世紀の田舎も、おとぎ話や伝説を反映しています。イソベルの父が半ば人間ではないような神秘的な宿命の女と結婚する、というところからしてファンタジー的です。森に消えた母は二度と戻ってきませんでした。イソベルと兄の「ピクニックに行って、両親に取り残され、魔女のような人に育てられる」という幼年期は「ヘンゼルとグレーテル」ですし、父親に虐待され、閉じ込められる隣家の娘はちゃんと長い髪の毛をしていて「ラプンツェル」を思わせるのでした。現実から数センチ浮いているような、ふわふわとした文章ですが、このグリムの森(かつシェイクスピアのアーデンの森)の現実は悪夢のようで狂気をはらんでいます。主人公の継母がちょっと頭がおかしいというだけでなく、子供たちは大人に搾取され、殺人、DV、子捨て、近親相姦、誘拐なども日常の一部としてさらっと起こります。

複数の要素が含まれているのはおもしろいですが、砂糖衣に包まれたグロテスクな現実は読んでいて悪酔いしそうです。アトキンソンの特徴として、たくさんの登場人物と事件を出し、複雑にからんだ世界を作り上げるということがありますが、本書では大風呂敷を広げすぎてテーマが拡散しており、結末で逃げている感じなのが残念です。ただ、全体に「少女」の情緒が漂っているところがいいな、と思いました。

2013年6月10日月曜日

アンティーク・マーケット

ドイツ語の授業を受けにいくときにいつもビーコン・ヒルを通ります。ショーウィンドウにきれいなガラスや磁気類を並べているアンティークショップに興味がありました。ビーコン・ヒルのアンティークはお金持ち御用達で敷居が高いですから、高価なアンティークというよりは半ばガラクタ屋のようなケンブリッジ・アンティークマーケットに行きました。価格帯は1~300ドルくらいで、ほとんど営業もされないので気楽です。

昨年も6月に一度行って、その時は小さな買い物しかしませんでしたが、今回は4つ買いました。


サラダを取り分けるカトラリーは来客のあったときに適当なものがなかったので買いました。麦の模様のガラスボウルも、この大きさの食器は便利なので実用目的です。麦の意匠がきれいだなと思います。

ヘレンドはハンガリー製で、模様が手描きなので定価は高いですが一輪挿しはお買い得でした。緑色の菊のような花が描かれていて、イギリス、フランス、北欧とも違う雰囲気の磁器でおもしろいです。ヨーロッパのようで中国のようでもあり、西アジアのようでもあります。野ばらを飾ってみました。野ばらは敷地内に自生しているものですが、香りも少しあり、いけておくと2、3日で蕾が開花します。

クリスタルの蓋付き容器はパウダーケースです。ファンデーションはコンパクトケースに入ったものを使いますし、これは結構通気性のある容れものなので、実用には向かないと思いますがガラスのカットが繊細です。

ケンブリッジ・アンティークは100以上のお店がブースを出しています。全体にはデキャンタやグラスなどの酒器が多い印象でした。私はアルコールを飲みませんが、もしも飲んでいたら間違いなくいろいろな酒器にも手を出して(浪費して)いたと思うので、飲めなくて本当に良かったと思いました。


2013年6月6日木曜日

I am Love(映画)

【映画情報】
Io Sono L'amore(イタリア)/I am Love(英語)/ミラノ 愛に生きる
2009年
Luca Gadanino監督
出演 Tilda Swinton, Flabio Parenti 他

【あらすじ】
ロシア出身のエンマは、ミラノの大富豪と結婚して3人の子供を生み、美しい良家の奥様として何不自由ない生活をしていた。息子の友人であるシェフが作った料理を食べたことをきっかけに不倫に走る。一家の事業はアメリカ人に売却され、そのレセプションではエンマの不倫相手、エドアルドの作る料理がふるまわれた。

【コメント】
イギリス人であるティルダ・スウィントンがイタリアのマダム(シニョーラかな?)を演じています。大富豪のお屋敷や、ミラノの街並み、郊外の自然がきれいで、ブランド物の衣装を着こなす俳優陣も美男美女ばかりです。そんなもので表面はコーティングされているとはいえ、中身は結構生臭いような嫌な話です。三人の成長した子供がいてもなお美しく、息子の年齢の男性との恋愛も不自然に思えない、ティルダ・スウィントンがヒロインだから映画の雰囲気に入ることもできますが、これが一般的な50歳の(30でも20でも)女性だったらあまり見る気がしません。

ラストには驚きました。でも、そこまでに2時間の長きに渡り美しい景色と美しい裸を見せられるのは少し辛いものがあります。日本語タイトルは「愛に生きる」よりは「本能に忠実に生きる」の方が良かったかと思います。

ティルダ・スウィントンはトカゲとか爬虫類を思わせる美人です。ロシアにはボルシチ以外の料理もあるということを知りました。

Carnation, Lily, Lily, Rose(本)


【書誌情報】
Hugh Brewstar, Carnation, Lily, Lily, Rose, Kids Can Press, 2007

【あらすじ】
5歳のケイト・ミレーは、両親、弟、叔母さんと大きなお屋敷に住んでいる。お父さんは画家で、家にはエドウィン・オースティン・アビーらの芸術家が集まった。ある日、サージェントさんがやってきて、夕暮れの百合の花の絵を描きたいので、ケイトにモデルになって欲しいと言う。茶色い髪の毛のケイトはサージェントさんの要望に従って金髪のカツラを被らないといけないし、長時間同じ姿勢で立っているのも辛かったけれど、誇らしくもあった。でもある日、ドリーとポリーのバーナード姉妹がやってきて、サージェントさんはケイトではなくバーナード姉妹をモデルに絵を描くことに決めた。

【コメント】
本書は児童書で、5歳のケイトがサージェントの「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」の製作について語ります。フィクションの部分もありますが、関連するサージェントのスケッチやカリカチュア、ミレー家に集う人々の肖像画、当時の写真などを全ページに配置し、大作の製作過程をまわりの人々もわくわくしながら見ている様子が楽しいです。

サージェントは、ボートで川下りをしていたときに見かけた「夕暮れの薄明かりの下で、子供たちがバラの茂みの間に紙の提灯を灯している」光景を描きたいと考えます。ミレー家の庭で絵を描くことにし、ケイトにモデルとなるよう依頼します。提灯を入手し、叔母さんが白い服を作ってくれ、夕方になるとケイトはポーズをとりました。でもケイトはポリーとドリーのバーナード姉妹に交替させられ、がっかりします。しかしやさしく配慮のある両親や叔母さん、まわりの大人に慰められます。サージェントはミレー夫人やケイトの肖像画も描きました。

サージェントは絵の製作に2年を費やしました。昼間のうちに提灯を吊り下げ、百合の鉢をセットし、カンヴァスを持ち出し、白い服のドリーとポリーがやってきます。それから芝生の上でテニスをして待ちます。そして日が暮れるとすぐにテニスの道具を放り出し、毎夕10~20分描いたそうです。ミレー氏は娘に「サージェントさんは提灯を灯すと、ピンクや赤の光が際立つ、特別な時間を捕らえようとしているんだよ」と言います。絵は8月に着手しましたが、寒くなると花がしおれてしまったので、近所の人からまだ咲いている花を買ったり、古い帽子の造花を使ったりしました。絵が完成するとケイトはお父さんと展示を見に行き、中から光を発しているかのように、絵が柔らかく光っていると思います。「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」という絵のタイトルも、ケイトにとっては特別なものでした。

子供向けのかわいらしい本ですが、いろいろな画家が登場するのがおもしろく、製作の様子も生き生きとしています。


フランシス・ミレーの作品です。アルマ・タデマに似ています。アルマ・タデマも本書にチラッと顔を出し、ケイトの肖像のスケッチも描いています。ミレーはタイタニックの事故で亡くなりました。

Alma Tadema

 エドウィン・オースティン・アビーは本書では「ネッド」と呼ばれています。おもしろくて親切な人柄だったようです。彼もまた、ボストン公立図書館の壁画を描いています。

Edwin Austin Abbey
少女時代の楽しい思い出と、芸術的な人々との出会いをスクラップブックにしたようなすてきな一冊で、子供の頃こんな本があったら良かったのに、と思いました。ボストンに関連のある画家が登場するのもうれしくて、amazonで注文しました。