本文と関係ありません |
... Everyone ate and ate. They stuffed themselves full of technicolour meat and all technicolour food they could get, as if there was no tomorrow.
But there was tomorrow, there was nothing but a tomorrow. It was yesterday that had vanished.
(みんなが食べてまた食べた。人々はテクニカラーの肉や、入手できる限りのテクニカラーの食品を詰め込んだ、まるで明日が来ないかのように。
しかし、明日はあった、ただ明日だけがあった。消えてしまったのは昨日だった。
和訳は適当です)
【書誌情報】
Margaret Atwood, The Blind Assassin,Anchor, 2000
=マーガレット・アトウッド著、鴻巣友季子訳、 『昏き目の暗殺者』、早川書房、2002年
【あらすじ】
カナダに住む老婦人、語り手のアイリス・チェースには20台で運転を誤って自殺同然の死を遂げた妹、ローラがいた。ローラが生前に書き、死後に出版された小説、The Blind Assassinは素性不明の怪しげな男が恋人に、『3つの太陽と6つの月のある世界で、盲目の奴隷が暗殺者となる』というSF風の物語を語る内容だった。一方、アイリスはボタン工場主の跡取りとして裕福な家庭に育ったが、第一次、第二次世界大戦を経て父親が財産を失い、意に沿わぬ結婚をする。2000年のブッカー賞受賞作。
【コメント】
マーガレット・アトウッドはカナダの作家で、昨年のノーベル文学賞候補にもなったようです。昨年よく読んだ作家、トレイシー・シュヴァリエが「好きな作家」として挙げていたので読んでみました。たまたま図書館の古本市で購入し、ずっと本棚の上で寝ていたのでした。
小説は、ヒロインであるアイリスの先祖の頃から始まる現在までの100年近くに渡る興亡史と、妹のローラが書いた小説、新聞記事から成り、入れ子構造になっています。内容も複雑で凝ったもので、20世紀ほぼ全般にわたる女性の一代記であり、同時にSF、フェミニズム、家族問題、徐々に明らかになる真相など、様々な要素が盛り込まれ、重厚長大です。また、読み進むにつれ語り手が信用できないことが分かり、単なるエンターテインメントに留まらず、全体を包含して「書く」ことに対する問いかけが行われているように思います。非常に生真面目な印象の一冊でした。
英語は難しい語彙が多く、少し読みにくかったです。英語の先生がアトウッドをお好きだそうで、The Handmaid's Tale を勧めていただいたので、これも読んでみます。
ブッカー賞受賞作・候補作はこれまで10数冊しか読んでいませんが、その限りでは、長い作品の方がおもしろいものが多い傾向があるように思います。本作も500頁強と長いです。
- 長くておもしろい Margaret Atwood, The Blind Assassin,Simon Mawer, The Glass Room, A.S.バイアット『抱擁』、サラ・ウォーターズ『荊の城』
- 短くてイマイチ William Trevor, The Story of Lucy Gault,マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』、イアン・マキューアン『アムステルダム』
すごい魅力的です。でも英語の語彙が難しいんですね。邦訳かな……(笑)
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返信削除コメントありがとうございます!石橋先生の感想も楽しみにしています。
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