Chopsticks(本)

Clara Schumann

 【書誌情報】
Jessica Anthony, Rodrigo Corral, Chopsticks, Razorbill, 2012

【あらすじ】
ニューヨークの若き天才ピアニスト、グローリー・フレミングが失踪した。彼女は幼い頃に母を亡くし、幼少期から父親によるピアノの特訓を受け、世界ツアーでコンサートを行うとチケットが売り切れるほどだった。しかし、最近精神が不安定になって「お箸のワルツ」ばかり繰り返し弾いていた。グローリーは南米から来た隣家の少年、フランクと父親の目を盗んで交際していた。

【コメント】
ティーン向けの写真絵本です。水色を中心とするパステルカラーを多用したさわやかでかわいらしい写真に目をひかれ、図書館で借りてきましたが意外と重い内容でした。写真はノスタルジックな雰囲気で、主役の二人も美形です。

手紙、会話文、チャットなどでストーリーを進める新しい手法を取っているにもかかわらず、内容は古典的で
  • ピラマスとシスビー(禁じられた恋。壁越しの手紙のやりとり)
  • ロベルト・シューマンとクララのロマンス(父親からピアノの特訓を受けるヒロイン。父親に男女交際を禁止される。精神病院)
  • シルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』(精神病院に入るヒロイン。実際、本書にも『ベル・ジャー』の中の「お箸のワルツ」を弾いていたというページが引用されている)
などを混ぜて現代風にしたような感じです。読んでいると特にシューマン夫妻のことを考えました。精神異常になって病院で一生を終えたのはロベルト・シューマンの方でしたが、「もしもクララが、プレッシャーに押しつぶされていたらどうなるか」ということを視覚化しているようでもあります。現実のクララ・シューマンはタフな尊敬すべき人だったようです。

寂れたコニーアイランドでのデート(なお、コニーアイランドはリニューアルして近代的なアトラクションに生まれ変わったらしいです)、押し花、コンサートのプログラムなどの写真で構成されています。フランクが通い、後に退学となった高校とグローリーが入所する精神病院の住所や使用している便箋が同じで、校長と院長が同一人物というのがおもしろいです。青少年を閉じ込める檻のような存在の象徴となっています。

高校生のころに英語の副読本を読む課題が2ヶ月に1冊くらいあり、テーマは「科学者の生涯」、とか「環境問題」、「グローバル化」といった私にはあまりおもしろくもないものが多かったのですが、少しマンガ的なストーリーでもあり、画像も多いこういう本だったら楽しく読めただろうな、と思いました。

tumblrのページ
予告編


コメント