Caroline Blackwood(1931 – 1996) |
【書誌情報】
Caroline Blackwood, Great Granny Webster, 1977
【あらすじ】
語り手の少女は10代の頃に病気療養のため、海辺に住むウェブスターの曾祖母のもとに預けられた。曾祖母は金持ちだが様々な妙な考えと習慣に固まった偏屈な人物だった。
【コメント】
「本好き、イギリス好き」を自認しておりますが(?)、表面をなぞっているばかりでまったく知識がないので、少しは勉強しようと、イギリスの文学賞、The Man Booker Prizeマン・ブッカー賞通称ブッカー賞の受賞作品と候補作品をできるだけ読もうと思いました。そんなことを思いついた割には「とりあえず短めのを読んで冊数を稼ぎましょう」と安易なことを考えています。
作者、キャロライン・ブラックウッドはイギリス貴族とギネスビールのギネス一家のお姫様の間に生まれ、画家ルシアン・フロイト(ジークムント・フロイトの子孫)、建築家Israel Citkowitz、詩人のロバート・ロウェルと結婚しました。写真を張ったとおり、美人です。本作は1977年のブッカー賞候補作です。
作者自身を思わせる孤独な少女が見聞した父方の家族の肖像です。ウェブスターの曾祖母は偏屈で風変わりな人で、その母親に育てられた祖母は結婚後、精神を病み、その息子である語り手の父親は若くして戦死し、妹はたくさんの男性と浮き名を流しましたがあるとき突然自殺します。荒涼とした屋敷で精神を病み、雑誌に載っている妖精の絵の切り抜きをして遊ぶ、自身も妖精のように美しい祖母とその妻に献身的に尽くす祖父の姿はゴシック小説の趣があります。高貴なような寂しいような雰囲気が全体に漂う一方、常にユーモアも顔を出し、「炭のクッキーを食べて涎を垂らし、叔母の高価な真白のベッドカバーを汚すペットのプードル」とか、「祖父の流儀に従ってフランス風のメニューを提示するものの、実際料理人が調理しているのはベーコンとジャガイモだけ」という記述はそこはかとなくおかしいです。
全体としてはつながりのある短編集のような構成で、だいたい一人につき1章が割かれています。(短い本を読んで冊数を稼ぐ目的と矛盾しますが)もう少し一人一人について詳しく書いてあるといいのに、とは思いました。「海辺」、「広大でさびれたお屋敷」、「恋人たちに買ってもらった物であふれている部屋」など舞台設定が魅力的なので、映画化したらおもしろそうです。
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