ラファエル前派の画家とモデル 4.メイ・モリス



May Morris (1862-1938)
ウィリアム・モリスとジェーンの次女として生まれる。母ジェーンと叔母より刺繍の手ほどきを受ける。美術学校で刺繍を学び、23歳でモリス商会刺繍部の責任者となる。父の影響で社会主義に傾倒し、社会主義連盟のスパーリングと結婚したが、メイがジョージ・バーナード・ショーと恋愛関係に陥ったために、離婚した。イギリスの芸術家協会Art Worker's Guildが女性の参加を認めていなかったため、Women's Guild of Artsを設立した。父の著作全24巻を編纂し、刺繍のデザインと実際の刺繍を行った他、アクセサリーのデザインを行った。「芸術刺繍」の発展に貢献した。

【モデルをつとめた主な作品】

ロセッティ「マグダラのマリア」デラウェア美術館、1877年
モデルはメイ・モリスではありませんでした。失礼しました。


左から、マーガレット・バーン・ジョーンズ、メイ、ジェニー、フィリップ・パーン・ジョーンズ
メイは大作にはあまり描かれませんでしたが、ロセッティはメイをモデルに「マグダラのマリア」を描いた他、いくつかのスケッチをのこしています。
【訂正】「マグダラのマリア」のモデルは別人のようです。お詫びして訂正致します。
ロセッティが子供を描くことは珍しく、時折ケルビム(子供の姿をした天使)などが描かれていたとしても、サイズが小さいだけの大人のような、子供らしくない姿という印象を持ちます。彼が描いたメイは、ロセッティの理想とした顔の特徴が随所に見られるものの、写真と見比べてみると本人にそっくりとは言えないように思います。

バーン・ジョーンズ「黄金の階段」テイト美術館、1880年

同、部分
ウィリアム・モリスとバーン・ジョーンズは大学時代から親しく、結婚後は家族ぐるみで付き合いがありました。メイは、バーン・ジョーンズの「黄金の階段」のモデルの一人をつとめました。同じような服装、似た顔の少女が20人ほども描かれているので、見分けが付きにくいですが、階段の中ほどで弦楽器を演奏しているのがメイです。最上段にいるのは、バーン・ジョーンズの娘、マーガレットです。本作には特定の文学的なソースがあるわけではなく、単に象徴的、唯美主義的な表現として描かれました。批評家のG.F.スティーブンスは、「神秘的な夢の光景のように、音楽を演奏する一団が通り過ぎる。少女達がどこへいくのか、誰であるのか、知る術はない」と書いています。

【その他】
メイのデザインによる刺繍作品
  • モリスとジェーンの長女、ジェニーは生涯、てんかんに苦しみ、結婚はしませんでした。メイにも子供はなく、モリスの直系子孫は現在はいません。
  • メイのデザインした刺繍作品は、父であるウィリアム・モリスとまとめて紹介されることが多く、影に隠れてしまいがちですが、すぐれた独自のデザインを作成しました。
  • ウィリアム・モリスの社会主義思想は著作、『ユートピアだより』にに現れています。中世を舞台にした騎士物語もいくつか書いているようです。 

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