ヨーロッパ旅行 ベルヴェデーレ美術館


 ウィーンに行ったらクリムトやウィーン分離派の作品を見たいと思いました。歴史美術館は18世紀以前の美術品が中心ですし、ニューヨークでノイエ・ガレリーに行ってがっかりした経験もあるので、クリムトの「キス」が所蔵されているベルヴェデーレ美術館(オーストリア・ギャラリー)には期待していました。期待に違わぬ展示で、特別展も良く、その上美術館自体がもともと王宮だったため豪華な建物で大満足でした。内部は撮影禁止なので、画像は公式サイトから拝借しています。

クリムト「水蛇」
クリムトの作品は、印刷やディスプレイで見るのと実物を見るのでは印象がまったく違います。金や銀を多く用い、絵の具を厚塗りにした上で削って模様をつけるなど、特殊な技法による絵が多いのですが、そういうのは紙やディスプレイにはきれいに再現されないようです。複製は妙にベタッとした感じで「やたら派手で変な絵」と思っていました。でも、薄暗くした部屋に金色の絵が展示されているのは神秘的で、装飾の繊細さに驚きました。女性の肌の色は少し緑がかっていて透き通るようです。19世紀末に流行した、結核に感染し、蒼白な顔色の「宿命の女」らしい姿だと思いました。複製を見ると妖艶さが際立つものの、実物では清楚さやはかなさも感じられるので不思議です。インターネットで画像検索すると、クリムトは初期の作品も硬質で美しいと思いました。コネチカット州ハートフォードの美術館に一点、あるらしいのでぜひとも見にいきたいものです(他にブーグロー、レイトン卿もあるらしい)。

メッサーシュミット「念入りな道化」
おもしろい展示は、18世紀の彫刻家、メッサーシュミットによる一連の頭部彫刻で、変顔コンテストのような表情の人たちがぐるっと輪になっているのです。現代アートかと思いました。夫は当然のように全部の変顔の真似をしていました。


古典主義的な絵画作品もあります。有名な馬上のナポレオンの肖像画もここにあります。


イジメ噴水
ベルヴェデーレ宮殿は丘の上にUpper Belvedereが、下にLower Belvedereがあり、まずは上で常設展を見てから、庭を散策して下に行きます。庭には写真の噴水があって、夫が「ひどいわぁ。なんでああいうことするん。かわいそうや」と言っていました。美術館に行くと、美しいもの、ゴージャスなもの、見事な細工のものをたくさん見ますが、ユーモラスなものも一つか二つ必ずあります。ユーモラス芸術品に気付くと、いつも夫が「punkaさん、あれあれ」と言って台詞付きで作品解説をしてくれます。


Lower Belvedereではウィーン象徴主義をテーマとした特別展が開催されていました。特別展のポスターに使われているカール・メディツの赤い天使の絵は、あまり美しくないし、展覧会全体の印象はこんなギラギラとした薄気味悪い感じではありません。なぜこの作品をアピールするのか疑問です。全体としてはメランコリックで、夢幻的な青い絵が多かったです。ギュスターヴ・モローやクノップフの他は聞いたことのない画家の作品が多く、画像検索してもほとんど見つかりませんでした。こういった、知名度が高くないけれど好きな感じの絵をたくさん見られて良かったと思います。


ベルヴェデーレ美術館で買った絵葉書ですが、他の美術館所蔵のものもあります。右上の王子さまの絵はクリムトです。こんな絵も描いていたのか、と意外でした。

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