【書誌情報】
The Scrapbook of Frankie Pratt : A Novel in Pictures, Caroline Preston, Ecco, 2011
【あらすじ】
フランキー・プラットは高校の卒業祝に母からスクラップブックを贈られた。フランキーは雑誌の切り抜き、写真、食品のラベル、各種チケットなどによるスクラップブックを作成する。
フランキーは家庭の経済事情により高校卒業後は老婦人の話し相手として働くが、幸運によりお金を得てヴァッサー大学に進学する。大学卒業後、ニューヨークの出版社に勤務し、パリに渡る。
【コメント】
日本でもここ数年、スクラップブック作りが少しはやっているようですが、アメリカはもっと前からさかんで、古いスクラップブックのコレクターもいるそうです。本書の作者、キャロライン・プレストンは骨董屋やネットオークションで古いスクラップブックを300冊も収集し、「フランキー・プラット」というニューハンプシャー生まれの若い娘さんが1920年代に作ったスクラップブックという体裁の本として出版しました。ラベルやチケットなどと一緒に、ヒロインがタイプライターで書いたというコメントが入っていて、これが全体をつなぐストーリーになっています。
フランキーの約10年間に渡る生活の様子は話としてはできすぎの感がありますが、スクラップブックを再構成して物語を作るというアイディアがおもしろいです。ヴィジュアル的にも楽しい一冊です。自分の好きな絵や写真、記念の品などを集めてコメントを付けるという手法は現代のブログに通じるものがあります。読むのはわくわくするし、こういう本を作るのも、大変そうですが楽しそうです。
本書は同じ作者によるスコット・フィッツジェラルドの恋人をモデルとしたGatsby's Girl(感想)と写真のネガとポジのような関係にあるようです。時代設定がほぼ同じですし、女子校、飛行機、パリなど随所に同じモチーフが見られます。フランキーの愛読書はフィッツジェラルドの小説です。また、メアリー・マッカーシーのThe Groupとも同時代で、ヴァッサー女子大が舞台となっているので、あの女子大の世界を視覚化するとこんなふうに見えるのか、という点でも興味深いです。
キャロライン・プレストンの執筆中の作品は、1940年代半ばの若奥さんのスクラップブックだそうです。フランキー・プラットのスクラップブックの一部はこちら(作者の公式サイト)から見られます。ぜひご覧になってみてください。
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