Death Comes for the Archbishop(本)


【書誌情報】
Willa Cather, Death Comes for the Archbishop, Alfred Knopf Inc, 1927

【あらすじ】
カトリックの司祭としてニューメキシコに赴任したフランス人のラトゥール神父の、新大陸での生涯。メキシコ人やアメリカインディアンとの軋轢と交流、同僚のヴァラン神父との生活等が丁寧に書かれる。

【コメント】
ウィラ・キャザーはアメリカ、ネブラスカ出身の作家です。開拓時代のアメリカを舞台とした作品を著し、One of Oursでは女性として初めてピュリツァー賞を受賞しました。日本での知名度はあまり高くないようです。

ヨーロッパ人が先住民族にたいしてキリスト教を浸透させようとするというテーマ自体は私にはなんとも居心地悪く、違和感がありましたが、ところどころに印象的な描写があるのと、終始一貫して穏やかで軽快な語り口に魅力があり、捨てがたい一冊でもあります。

メキシコ人から譲り受けたコンテントとアンジェリカという名の白いラバに乗って、日干し煉瓦の家やメサ(地形)のある乾燥した砂地を行く茶色い僧服のラトゥール神父と同僚のヴァラン神父という図は厳しい美しさがあるように思います。二人は20年以上にわたり共に仕事をし、生活しますがヴァラン神父はより厳しい状況のコロラドで活動するため、ラトゥール神父の元を去ります。

「コロラドまでコンテントを連れて行くつもりですか、ジョセフ(ヴァラン神父の名)?」
ジョセフ神父は瞬きをした。「ええ、もちろん。コンテントに乗っていくつもりでした。でも、もしあなたがここでコンテントを必要ならー」
「ああ、まったくその必要はありませんよ。ただ、もしコンテントを連れていくならアンジェリカも一緒に連れて行ってもらえませんか。あの二匹はお互いに対してとても愛着があるんです。どうして彼らを永久に引き離すのでしょうか、誰もその理由を彼らに説明できません。二匹は長い間一緒に働いてきたのです」

ラバは雑種で、子孫を残せないのだそうです。カトリックの聖職者は生涯独身を貫きます。ラバの姿に二人の神父が投影されているように思いました。同僚との別れに際し、引き止めたり、美辞麗句を連ねて励ましや別れの表現をしたりせず、「ラバは二匹一緒に連れて行ってほしい」と頼むラトゥール神父が切ないです。

アメリカ・インディアンのナバホ族が登場します。彼らの「野営をしたら焚火やテントの痕跡を完全に消し去る」、「狩をするとき川や森を荒廃させず、自然の恵みを必要最小限だけ受ける」というライフスタイルは考えさせられるものがあります。

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