驚異の青い棚 10. 昔玩具、今お宝



子供の頃に、両親が「トウキョウのお土産だよ」と言って出してくれたものの一つが、地球ゴマです。回転音をさせながら、糸の上ですごい速さで回るので、前から持っていた木製のコマと同じものとは信じられませんでした。他に「トウキョウのお土産」でもらったものは、読めない字が書いてあるふさふさの本や、折り紙の1/4サイズで1000種類くらい(本当は20種類くらい)の異なる模様の千代紙の入った箱、光る粘土などで、未知なるトウキョウはきっと驚くようなものが何でもある、すごい所なのだろうと思いました。

ヴンダーカンマーによくあるかっこいい天球儀は高価なので、私は形が似ている地球ゴマで良いと思いました。特にありがたくもない感じで実家に転がされていたのをもらってきました。その後、2年程度で地球ゴマの生産中止が発表され、価格が大高騰しました。高騰したからにわかに大切になったわけではなく、玩具で遊ぶ子供が成長してからも保管しておいてくれた親に感謝しなくてはなりませんが、驚異の棚に飾っているのは、拾ったもの、作ったもの、ありふれたもの、価値のないガラクタばかりであるところ、地球ゴマだけはちょっとしたお宝です。大人が見ても、きれいな形だと思います。

子供の頃に憧れた東京は、何でもある、すごい所ですが、上京する頃にはかつてのように驚いたり、すごいと思うことはなくなってしまったし、欲しいものがあっても、学生には買えませんでした。多少は自分の自由になるお金ができる頃には、毛皮の付いた絵本や、千代紙はいくらなんでも子供っぽく、欲しいもの自体、あまりなくなってしまいました。


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