Cloaked in Red(本)

J.E.Millais 'Little Red Riding Hood'
【題材、書誌情報】
「赤ずきん」 グリム童話
Vivian Vande Velde作、Marshall Cavendish刊、2010年

【あらすじ】
母親の言いつけでおばあさんにお土産を持って行こうとした赤ずきんちゃんは、途中の森でオオカミに出会う。赤ずきんちゃんから行き先を聞き出したオオカミは先回りしておばあさんを食べ、さらに赤ずきんちゃんをも食べる。

…というグリム童話やペロー童話の赤ずきんの話は有名ですが、「なぜオオカミは森で出会ってすぐに赤ずきんを食べないのか」、「赤ずきんが自分のおばあさんとオオカミを見分けることができないのは不自然だ」、「終わり近くできこりが登場しておばあさんと赤ずきんを救出するが、唐突すぎるし、すぐに殺さないでオオカミのお腹に石を詰め込んで縫い合わせたのは何のためだったのか」等の疑問を持った作者が赤ずきんを元ネタに、8通りのバリエーションを語ります。
  1. 「赤いマント」森でオオカミに出会った赤ずきんはきこりに助けを求めますが、きこりは助けてくれません。
  2. 「赤ずきん人形」母親に抑圧されているお針子ジョルジョットは子供が欲しいと願い、赤ずきんを着けた等身大の少女の人形を作成します。人形は命を得ますが、森の中で男たちといちゃつき、ジョルジョットを落胆させます。
  3. 「赤ずきんの家族」赤ずきんの家庭の様子。両親とおばあさんとの関係。おばあさんと赤ずきんの正体。吸血鬼もオオカミは怖いらしい。
  4. 「おばあさんとオオカミ」罠にかかったオオカミを助けたおばあさん。孫娘が訪ねてきたためオオカミを隠し、さらにおばあさんにとって迷惑な求婚者のきこりが訪ねてきたので孫を隠し、そこへ息子が訪ねてきたのできこりを隠します。ドタバタ
  5. 「薪拾いのヂームズ」親切な薪拾いのヂームズは森でヘンゼルとグレーテル、子ブタのレンガの家を訪ねるオオカミ、おばあさんの家でベッドに寝ているオオカミ等に遭遇し、自分にできるだけの手助けをしようとします。しかし、善意は人を救いません。
  6. 「ウィリーとその弟はなぜ何事も成し遂げられなかったのか」おばあさんと孫がオオカミのぬいぐるみで遊んでいたところ、本当のオオカミが出たと勘違いして騒動を起こしたのはグリム兄弟でした。
  7. 「小さな赤い頭痛」オオカミ視線の赤ずきん。人間にオオカミ語が通じないためディスコミュニケーションが起こります。オオカミも大変だ。
  8. 「赤ずきんの赤ずきん」愚かな女の子と賢いずきんの物語。
【コメント】
以前の投稿で紹介した『六つのルンペルシュティルツキン物語』の姉妹編です。ヴァンデ・ヴェルデ先生のユーモアと皮肉にあふれる「赤ずきん」です。現代的で、痛快。内容は軽く、読みやすいです。子供の英語学習に使いたい感じです。ルンペルシュティルツキンよりもさらに砕けた雰囲気で、赤ずきんの話を自在に操っている印象です。個人的な好みとしてはルンペルシュティルツキンの方が好きです。
なお、上の絵はジョン・エヴァレット・ミレーの作品です。おそらくモデルはミレー自身の娘と思われます。

ミレーのお嬢さん、エフィーちゃんのサイン入りブロマイド(ルイス・キャロル先生撮影)
【お勧め度】
★★★☆☆

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