2018年10月21日日曜日

カール・ラーション展@損保ジャパン美術館



損保ジャパン美術館で開催中(12月24日まで)の「カール・ラーション展」に行きました。スウェーデンの画家で、日本でも書籍が複数販売され、その愛らしさから、人気のある画家だと思います。作品の中心である水彩画は、色彩が澄んでいて鮮やかで、北欧の冷たい空気を感じさせます。家族をテーマにした作品が多いです。ラーションは8人の子供がいて、どの子もかわいいです。

カール・ラーション夫人は、画家志望のカリンで、結婚後は、自分や子供たちの服、自宅のタペストリー、テーブルクロス、クッションカバー等のテキスタイルをデザイン・製作しました。展覧会には、服やテキスタイルの展示もありました。オリジナルは、布が経年劣化しているため、カール・ラーション記念館のスタッフや、ラーションの子孫が復刻版を製作し、それが展示されています。

本のイラストや、ラーションの家で使用していた家具・布の展示が多く、水彩画がもっとあると良かったのに、とは思いましたが、ラーションの暮らしぶりをイメージさせる展示ではありました。ラーションは、工場で大量生産される家具調度を嫌い、自宅の改装を自ら手掛け、日常生活に美しい手仕事を取り入れました。ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツに通じるのだろうと思います。ジェーン・モリスも、カリン・ラーションのように、夫の絵画のモデルを務め、タペストリーの製作も行いました。ラーションはスウェーデンのウィリアム・モリスなのかと思いましたが、モリスは生まれが裕福で、ラーションは貧しい出自だったそうで、そのせいかどうかは分かりませんが、モリスは重厚、ラーションはもっと軽やかで簡素です。しかし、幸福感にあふれていて、明るい感じがあります。

また、彼の絵は、どうにもSNSを思わせるものがあります。例えば「うちの妻、タペストリー作った。めっちゃ器用」とか、「DIYの家♡」とか、「家族でザリガニパーティした。たくさん釣った」というようなコメントを付け、投稿する度に10万くらい「いいね!」が付くイメージです。

ラーションは、大量生産のものを嫌ったにもかかわらず、展覧会の終わりには、安価な大量生産の代表格のようなイケアの家具が、「イケアの家具もラーションのデザインの影響を受けています」と展示されているのがちょっと可笑しかったです。

2018年10月14日日曜日

マシュー・ボーンの『シンデレラ』


夫と1ヶ月に1回、展覧会、コンサート、遊覧船等々、何かしらイベントに出かける、と約束をしていて、10月はマシュー・ボーンのバレエ『シンデレラ』を観に行きました。バレエは、10年以上前にボリショイ劇場で『白鳥の湖』を観たことがあり、自分はバレエにはそこまで興味ないかも、と思っていたのですが、上記リンクの予告編を見て、ステキだなと思って、出かけました。本物は、予告編の100倍くらい、すばらしいものでした。

マシュー・ボーンはバレエではなく、コンテンポラリー・ダンスの振付家のようです。舞台は、1940年のロンドンで、空襲のシーンもあります。シンデレラは眼鏡っ娘で、王子様はPTSDにかかった軍用機のパイロットです。フェアリーは、白い光るタキシードを着た、銀髪の天使です(ダンサーは男性ですが、中性的な感じです。英語のfairyには同性愛者という意味がありますから、このような解釈は、やはり、さもありなん、という気がします)。ストーリーにも変更が加えられていて、シンデレラは王子様の開催するダンスパーティに行くのではなく、空襲で負傷し、発見されて病院に運ばれるまでの間に、ダンスホールで踊る夢を見ます。

プロコフィエフの音楽が、第二次世界大戦中のロンドンに変更された舞台に合っていて、飛行機や爆撃、サイレンの音などの効果音とマッチしていて、驚きました。バレエ音楽は『ロミオとジュリエット』が中学校以来のお気に入りですが、『シンデレラ』も前衛的でクールな音楽だと思います。

音楽だけでなく、ダンス、舞台装置、照明、衣装等、ステージ上のすべてが行き届いていて非の打ち所がなく、美しく、楽しく、ユーモラスでもあれば、残酷さや悲哀を感じさせる部分もあります。こんな経験、人生でそうそうできるものではないと思います。地味なヒロインのシンデレラは、現実にはお姫様になるわけではなく、地味なまま、幸せを掴むところも現代的で好感度高いです。

観客は女性が多いと思いました。母が「男の人は、なかなかバレエなんて来てくれないものよ」と言っていましたが、夫はたいそう気に入って、「めっちゃええやん。今度はお母さんも誘って、3人で行こうよ」という話になりました。