2013年11月30日土曜日

猫を愛でる夫



サンクスギビングにお邪魔したお宅にて、猫を愛でる夫。膝にはいただいたゴムのアヒルちゃんものせて、ご満悦でした。

2013年11月27日水曜日

Oryx and Crake(本)

ルーカス・クラナハ(父)「エデンの園」
【書誌情報】
Margaret Atwood, Oryx and Crake,Doubleday, 2003

【あらすじ】
人類がほぼ死に絶え、「クレイカー」と呼ばれる新人類と遺伝子操作で作り出された奇妙な動物たちの存在する文明の崩壊した世界で、スノーマンは過去を回想する。スノーマンはかつてジミーと呼ばれ、父親は遺伝子操作関係の科学者だった。ジミーは学校で非常に優秀な少年、クレイクと出会い、親しく付き合うようになる。クレイクとジミーは共にオンラインゲームをしたり、ポルノ番組を視聴し、ある日児童ポルノに出演していた印象的な眼差しの少女に強くひかれる。クレイクが遺伝子操作関係の研究職に就き、豪奢な生活を送る一方で、ジミーはコピーライターとなる。ジミーは自らの境遇に不満を持っていたが、クレイクの勤務先の宣伝係として抜擢され、そこで児童ポルノに出演していた少女、オリクスと出会う。2003年のブッカー賞候補作。

【コメント】
マーガレット・アトウッドのMaddaddam三部作の第一作です。ここで書かれる世界は現代とつながっている近未来で、22世紀~25世紀頃を想定しているのではないかと思います。遺伝子操作、ディストピア、新人類などが登場し、サイファイ色が濃いと同時に、様々な文学作品への言及も見られます。

高度な語彙が多く登場し、文体も微妙で複雑であり、しばしば何について書かれているか見失いそうになる、難しい小説でした。英語のレッスンで読んだのですが、先生は「叙述的ではなく、思考についても事実と区別せずに書いたり、時間軸を操作したりしているから読みにくいのだと思う」とおっしゃっていました。また、どうやら何か大事件が起こって人類がほぼ絶滅し、重要人物であるオリクスとクレイクも今はいないらしいことは冒頭から分かるのですが、その原因については物語の8割くらいまで説明がなく、終盤に至ってからここへ至った過程が一部、説明されます。しかし、崩壊した世界で主人公、スノーマンがこの先どうやって生きていくのかは知らされない、オープンエンディングです。読みにくい上に、まだまだ分からないことばかりなのに、不思議な雰囲気にのまれ、読み終わるとぜひともすぐに第二作を読まないと、と思います。(第二作は3割程度読んだところですが、本書よりもはるかに読みやすいです)

スノーマンはクレイカーたちに「クレイクは万能の神で、クレイカーを創造し、オリクスはすべての動物を創造した」と教えます。新しい人類や動物の創造は本書の主題の一つで、そのことから旧約聖書の創世記を思わせます。また、Wikipediaによればコールリッジの「老水夫行」、カート・ヴォネガットの作品からの引用もあるそうです。私が特に意識したのはヴァージニア・ウルフの『波』の影響です。浜辺に6人の子供たちがいる描写から始まり、波の音や小鳥のさえずりなどの擬声語が多用され、太陽の位置により一日の時間帯が表されるなどは、まさに『波』のとおりです。

本書に書かれる世界の終わりは、遺伝子操作により創造された気味の悪い動物が跋扈し、わけの分からない病気が流行し、ひどい格差社会で、無政府状態となり、コープスコーなる黒い組織が人々を操るという、救い難い様相を呈しています(蛇足ですが、Corpse Corps Boardという会社が実在するようです。スケートボードの会社です)。繊細で文学的な文章と、現代の世界が最悪の形で発展したかのような近未来の描写が絶妙に溶け込んでいます。センセーショナルかつ静かな諦めを感じさせる作品であり、現代社会の問題の根本を問うているようでもあります。高校や大学の講義で課題図書となることも多いらしく、Spark Note(教科書リーダー、虎の巻)も出版されています。

三部作であるものの、日本語訳は『オリクスとクレイク』のみが出版されています。本書を読んだ感じだと、まだまだ始まりに過ぎない印象です。

2013年11月26日火曜日

日商簿記2級

勉強したもの(豆は除く)
帰国したら再就職活動をしますが、履歴書に書けるような資格を何も持っていないので、一時帰国の際、日商簿記2級を受験しようと思いました。今年7月末に受験しようと考え、独学でも3ヵ月勉強すれば合格できるという話を聞いていたので11月試験を申込みました。amazonでテキストを買い、実家から転送してもらいました。SAL便を使用し、当初1、2週間で届くと思ったのですが、遅れに遅れて1ヶ月たっても届かず、紛失か、と諦めてテキストを改めて購入して送ってもらおうとしたその日にやっと手元に届きました。約3.5ヵ月だったはずの勉強期間が2ヵ月ほどになってしまい、集中的に勉強するしかないと思って、9月半ばからはほとんど読書もせず、試験勉強に取り組みました。

使用したテキスト、問題集は以下のとおりです。


これ以外に「簿記検定ナビ」に掲載されている仕訳問題対策をプリントアウトして解きました。「簿記検定ナビ」は日商簿記検定受験のための有用な情報が多く、大変お世話になりました。テキストも「簿記検定ナビ」で勧められているものです。実は、数年前にも「ぜ○○会」の簿記2級の通信教育講座を受講したことがあるのですが、あまり理解できず、途中で挫折しました。今回、受験前に再度そのテキストを見てみると、やはり解説が分かりにくく感じ、出題範囲も簿記試験の過去問を逸脱しているようでした。「スッキリシリーズ」は範囲も過不足なく、解説も分かりやすかったです。電卓は当初、写真に写っているものを使用していたのですが、途中で壊れてしまい、「簿記検定ナビ」のお勧め電卓に替えると、使いやすくて驚きました。過去問は5回解きました。

試験本番では見たこともない問題が出題されたり、予備校の解説で「これは簡単です」と言われていた設問で半分くらいしか得点できなかったりして、不合格を確信しましたが、なんとか合格することができました。渡米以来、再就職につながる活動を何もしていなかったので(簿記合格がつながるかどうか分かりませんが)良かったかなと思います。

実家の家族が受験に必要な申込手続きを代行してくれ、当日は会場への送迎もしてくれました。また、夕飯に同じ料理が続いたり、受験のために夫の渡米後にもしばらく日本に滞在していたりで、夫には迷惑をかけてしまいましたが、文句も言わず応援してくれました。受験に協力してくれた家族に感謝します。

2013年11月24日日曜日

一時帰国 蔵書整理


手放した本の一部
実家には本棚2つ分の蔵書があり、さらに渡米のために倉庫に預けている本や、アメリカで買った本もあります。日本の住宅事情を考慮すると帰国後にも十分な本の収納スペースの確保できない家に住む可能性が高く、キンドルを買ったので青空文庫や英語で読める本は手放そうと思って蔵書を整理しました。本は、再読するつもりで手元に置いていましたが、一生の間に読める本が限られていることを考えると、再読できる本は少ないだろうと思います。ただ、下の写真のような画集、写真集、展覧会のカタログなど画像中心の本、原典が英語以外の海外文学の翻訳、ヴァージニア・ウルフ関係の本などは保存することにしました。



手放す本は、すべて背表紙だけ写真を撮りました。捨てる前に写真を撮っておくと、未練がなくなり、後から写真を見ても「捨ててよかった」と思えます。そう思うということは、普段からいらないものを多く貯めこんでいるということだろうなと思います。

本棚は作りつけのものと備え付けのものとがあり、備え付けの方は漆喰壁がむき出しで、壁に接している部分は少しカビが発生していました。「本の虫干し」の意義があまり良く分からなかったのですが、やはり必要なのかと思いました。蔵書の3分の1程度を処分することにしました。不要な本は実家の家族が中古で販売してくれるそうです。ただ、キンドルが出たせいか、読書する人が減っているせいか、本はあまり売れず、文庫本などはほとんど値がつかないものも多いようです。家族には手間をかけてしまいますが、ずっと本の処分のことが気がかりだったので、減らすことができてほっとしました。

カズオ・イシグロ『充たされざる者』

この本の読後感
【書誌情報】
Kazuo Ishiguro, The Unconsoled, Faber and Faber, 1995=カズオ・イシグロ『充たされざる者』、早川書店、2007

【あらすじ】
著名なピアニストのライダーは、「木曜の夕べ」という催しで演奏するべく招かれていた。彼は催しの詳細を把握していないが、演奏会は町の危機を乗り越える望みのようである。ホテルのポーター、支配人、そのピアニストを志す息子等々、見ず知らずの他人が次々とライダーに頼みごとを持ちかける。

【コメント】
『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、最新作、『わたしを離さないで』も映画化されて話題となったカズオ・イシグロの実験的小説です。 文庫本で950ページという長さですが、主人公のピアニスト、ライダーに頼みごとをする町の人たちと、ライダーとの関係が明かにされず、町の「危機」が何であったのかも謎に包まれたままです。冒頭から最後まで、不穏な空気なのに妙に緩んでいて居心地が悪いです。

今まで読んだ本の中でも一、二を争うような退屈さで、読むのが苦痛でした。たまたま日本語訳を買ったので読みましたが、英語で読もうとしていたら挫折していたと思います。全体としては悪夢のような話で、私にはところどころデルヴォーの絵画や、映画『去年マリエンバードで』を思わせる部分もあったのですが、それらにあるような甘美さが本書にはなく、ただ単に1000頁も延々と砂を噛んでいるような感覚でした。かなりフラストレーションがたまりました。『わたしを離さないで』はおもしろく読んだので、カズオ・イシグロはいろいろな作風を使い分ける作家なのだろうと思います。

2013年11月23日土曜日

一時帰国 ベニエ

9月にニューオーリンズへ旅行したとき、行列が長すぎてカフェ・ド・モンドの名物、ベニエを食べられなかったので、母に頼んで揚げてもらいました。レシピはこの本に載っているそうです。このドーナツはショートニングとエバミルクを使っているのが特徴らしいのですが、母はショートニングの代わりにオリーブオイルを使っていました。


ケーキドーナツではなく、「揚げパン」に近いものだと思います。生地はきめが細かく、もっちりしています。粉砂糖に加え、私はシナモンパウダーをまぶします。最近はドーナツを食べることはほとんどありませんが、子供のころはベニエをよくおやつに作ってもらったほか、パン屋さんに行くと、ねじりドーナツを買ってもらうことがあったので、懐かしいです。ところで、今回宿泊した溝の口の駅ビル、ノクティ(近隣住民が溝の口を「ノクチ」と言うところから命名されたようです。ひどいセンス)にもカフェ・ド・モンドのチェーン店がありました。ニューオーリンズにはない、クリームや果物で飾ったドーナツもメニューにあるようでしたが、行列している人はいなくて、店内も混雑してはいないようでした。

2013年11月22日金曜日

一時帰国 ウィリアム・モリス展

一時帰国の際に、府中市美術館のウィリアム・モリス展へ行きました。ウィリアム・モリスの作品は一点ものの絵画などがほとんどなく、テキスタイルや家具が中心のため開催しやすいのか、2年に一度くらいの頻度で関東のどこかしらの美術館で行われている気がします。私は、最近だとパナソニックの美術館、横須賀美術館での展覧会に行きました。府中市美術館は「府中の森」の一画にあり、ロケーションは良いですが駅からはバスで行くしかなく、少し不便だと思いました。

展示としては、この展覧会はややがっかりでした。展示数は90余りで、そのうち、イギリスの教会にあるステンドグラスの写真が数十を占めていました。美術館でレプリカを見せられてもあまりうれしくありません。テキスタイルの展示も、これ!というものはありませんでした。


ミュージアムグッズです。ヴォイジーのデザインを翻案した大きなハンカチは、頭をしばるのに使おうと思います。


一時帰国 嵐山

渡月橋
夫の実家が関西にあるので、嵐山へ遊びに行きました。台風の影響で川が増水し、川辺の喫茶店やお土産屋さんの床まで浸水して大変だったらしいですが、私たちが行ったときには回復し、賑わっていました。紅葉の名所ですが、11月初旬だと少し早すぎたようです。

いまいち赤くない
天龍寺を拝観し、竹林の道を通って大河内山荘へ行き、常寂光寺へ行って、清涼寺へお参りし、駅前で昼食を食べ、英語の先生にお土産を買いました。



天龍寺は苔がきれいなお寺でした。お庭の隅々まで入念に手入れがされていました。苔を育てるのは難しくて、気を抜くとうつくしいスギゴケがすぐにゼニゴケになってしまうそうです。


「竹林の道」はガイドブックなどで写真を見て、行きたいと思っていました。整然とした眺めでした。夫は外国人のカップルに「写真を撮ってもらえませんか」と言われていました。夫と旅行に出かけて、知らない人に写真をとってと頼まれなかったことがないほどです。



ニューイングランドやヨーロッパもいいけれど、京都もいいなと思いました。古都は落ち着きますし、食事もおいしく、お土産物の種類が豊富で、なんといってもサービスが非常に良いと思います。