2011年12月25日日曜日

『ロバと王女』(映画)

父親に求婚される王女
【題材等】
「千匹皮」グリム童話

監督 ジャック・ドゥミ
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・マレー他

【あらすじ】
ある国の王妃が死に際に国王に「再婚するなら私と同じように美しい人としてください」と遺言をのこす。王は美人を探すが、王妃と同じような美人は自分の娘である王女しか見つからないため、王女に求婚する。王女は困って名付け親の妖精に助けを求める。妖精は不可能な願い事をすれば王があきらめるだろうと考え、「空を映したような、月の光のような、太陽のような3枚のドレスと宝石を生むロバの皮を要求するように」とアドバイスする。しかし、王は娘のその望みをかなえてしまったため、王女はロバの皮をかぶって城から抜け出し、隣国の宮殿に下働きとして仕える。

【コメント】
白いライオンのようなネコのような形の玉座、風船のような棺、造花を飾りつけた室内装飾、ヘリコプターでの登場など、破天荒なセンスと、極彩色の色遣いが面白いです。ミュージカルですが、歌はあまり良くないです。滑稽すぎて見ていて気恥ずかしいです。

父親にドレスなどをもらって、喜んだ王女が「こんなに良くしてくれるのだから結婚した方がいいかも」と言う場面は
それだけはないわ
としか思えませんでした。原作では妖精は登場せず、王女自身が全力で父親との結婚を回避しようとします。ところが、Wikipediaで調べると、近親相姦エンディングもあるのですね。それはショックです…。

なんとなくニセモノ臭く、子どもっぽい感じもします。カトリーヌ・ドヌーヴはきれいです。

【お勧め度】
★☆☆☆☆

2011年12月24日土曜日

Cloaked in Red(本)

J.E.Millais 'Little Red Riding Hood'
【題材、書誌情報】
「赤ずきん」 グリム童話
Vivian Vande Velde作、Marshall Cavendish刊、2010年

【あらすじ】
母親の言いつけでおばあさんにお土産を持って行こうとした赤ずきんちゃんは、途中の森でオオカミに出会う。赤ずきんちゃんから行き先を聞き出したオオカミは先回りしておばあさんを食べ、さらに赤ずきんちゃんをも食べる。

…というグリム童話やペロー童話の赤ずきんの話は有名ですが、「なぜオオカミは森で出会ってすぐに赤ずきんを食べないのか」、「赤ずきんが自分のおばあさんとオオカミを見分けることができないのは不自然だ」、「終わり近くできこりが登場しておばあさんと赤ずきんを救出するが、唐突すぎるし、すぐに殺さないでオオカミのお腹に石を詰め込んで縫い合わせたのは何のためだったのか」等の疑問を持った作者が赤ずきんを元ネタに、8通りのバリエーションを語ります。
  1. 「赤いマント」森でオオカミに出会った赤ずきんはきこりに助けを求めますが、きこりは助けてくれません。
  2. 「赤ずきん人形」母親に抑圧されているお針子ジョルジョットは子供が欲しいと願い、赤ずきんを着けた等身大の少女の人形を作成します。人形は命を得ますが、森の中で男たちといちゃつき、ジョルジョットを落胆させます。
  3. 「赤ずきんの家族」赤ずきんの家庭の様子。両親とおばあさんとの関係。おばあさんと赤ずきんの正体。吸血鬼もオオカミは怖いらしい。
  4. 「おばあさんとオオカミ」罠にかかったオオカミを助けたおばあさん。孫娘が訪ねてきたためオオカミを隠し、さらにおばあさんにとって迷惑な求婚者のきこりが訪ねてきたので孫を隠し、そこへ息子が訪ねてきたのできこりを隠します。ドタバタ
  5. 「薪拾いのヂームズ」親切な薪拾いのヂームズは森でヘンゼルとグレーテル、子ブタのレンガの家を訪ねるオオカミ、おばあさんの家でベッドに寝ているオオカミ等に遭遇し、自分にできるだけの手助けをしようとします。しかし、善意は人を救いません。
  6. 「ウィリーとその弟はなぜ何事も成し遂げられなかったのか」おばあさんと孫がオオカミのぬいぐるみで遊んでいたところ、本当のオオカミが出たと勘違いして騒動を起こしたのはグリム兄弟でした。
  7. 「小さな赤い頭痛」オオカミ視線の赤ずきん。人間にオオカミ語が通じないためディスコミュニケーションが起こります。オオカミも大変だ。
  8. 「赤ずきんの赤ずきん」愚かな女の子と賢いずきんの物語。
【コメント】
以前の投稿で紹介した『六つのルンペルシュティルツキン物語』の姉妹編です。ヴァンデ・ヴェルデ先生のユーモアと皮肉にあふれる「赤ずきん」です。現代的で、痛快。内容は軽く、読みやすいです。子供の英語学習に使いたい感じです。ルンペルシュティルツキンよりもさらに砕けた雰囲気で、赤ずきんの話を自在に操っている印象です。個人的な好みとしてはルンペルシュティルツキンの方が好きです。
なお、上の絵はジョン・エヴァレット・ミレーの作品です。おそらくモデルはミレー自身の娘と思われます。

ミレーのお嬢さん、エフィーちゃんのサイン入りブロマイド(ルイス・キャロル先生撮影)
【お勧め度】
★★★☆☆

2011年12月22日木曜日

Spinners

どうしたん?
【題材等】
「ルンペルシュティルツヘン」 グリム童話
Donna Jo Napoli作、Puffin Books刊、1999年

【あらすじ(ネタバレあり)】
恋人の父親に「金で作ったウェディングドレスを用意すれば娘と結婚させてやる」と言われた仕立屋は老婆から紡ぎ車を強奪し、藁を金に紡ぐことに成功するものの、事故により結局恋人と結婚することができなかった上、片脚が委縮してしまいます。恋人は粉屋と結婚し、娘を産んだ後、産褥で死亡します。長じて、娘は紡ぎの名人となりますが、粉屋が「娘は藁を金に紡ぐことができる」と王様に言ったので、娘は「金を紡ぐか、さもなくば死刑」と言われます。仕立屋は手助けしますが…

【コメント】
本作品では、ルンペルシュティルツキンがヒロインの実の父親、粉屋は育ての父親という設定になっています。ルンペルシュティルツキンが子供を欲しがるのは「食べるため」と思っていたのですが、彼は別に手当たり次第子供を誘拐したりして食べまくっていたわけではありませんでした。本作品はルンペル氏が「その子供」を欲しかった理由を説明しています。他人の子供を奪おうという邪悪な人間は自ら滅びるのですが、彼が子供を心待ちにしてこんな物を食べさせてやりたい、と考えたりおもちゃを作ったりする箇所は泣かせどころです。また
  • 娘の恋人に金の衣装の作成を要請する
  • 自分の軽はずみな発言により娘を試練にあわせた挙句に「もっと金を紡げ。父親の命令をきけないのか」と要請する
  • 自分の立場を明かさずに、「名前を当てられなかったらお前の産んだ赤ちゃんを連れていく」と言う
という、変な父親三人が登場します。こんな父親はイヤだ。ヒロインの旦那さんも変な人であり、ちょっとバッドエンドです。

【お勧め度】
★★★☆☆



【おまけ】
純金のドレス。画像はこちらから拝借しました。

2011年12月21日水曜日

Lady Jane

リーゼント
【題材】
イギリス史

【あらすじ】
ヘンリー8世の後を継いで国王となった病弱なエドワード6世は、10代で夭逝します。彼にはメアリーとエリザベスという異母姉妹がいたものの、政治の実権を握るジョン・ダドリー等の陰謀により、ヘンリー8世の姪であるジェーン・グレイが即位します。本作品はジェーンが周囲の意向によりジョン・ダドリーの息子、ギルフォードと結婚し、理想に燃えてイギリスを統治しようとするもメアリー1世により処刑されるまでを描きます。

【感想】
日本での知名度は低いですが、格調高く、素晴らしい映画です。ジェーンとギルフォードは政略結婚ですが、それが純愛に変わり、運命に翻弄されて二人とも殺されてしまうのが切ないです。今となってはイギリス映画の大御所の感があるヘレナ・ボナム・カーターがまだ初々しく、相手役のケアリー・エルウェスも王子様らしい風貌です。風景や音楽もきれいで、約2時間半という長さを感じさせない、濃い内容です。史実と異なる点もあるとは思いますがそのことは気にしても仕方ないかと。

【評価】
★★★★★

『六つのルンペルシュティルツキン物語』

【題材】
「ルンペルシュティルツヘン」グリム童話

【あらすじ】
父親が「私の娘は藁を金に紡ぐことができます」と言ったがために、王様に、三晩藁を金に紡ぐように命じられた娘の物語。その不可能な仕事をしてくれるという小人が現れ、娘を救う。しかし、金を紡ぐ仕事の代償として三晩めに小人が娘に求めたのは「初めに生まれた子供を自分にくれ」というものだった。ただ、一定期間内に自分の名前を当てることができたら勘弁してやると小人は言う。「ルンペルシュティルツヘン」という名前を当てることができたので小人は悔しがって自らの身を真っ二つに引き裂いた。

…というグリム童話の話ですが、「父親がマヌケすぎる」、「『わらを金に紡がないなら死刑』」と言う強欲で残虐な王様と結婚してヒロインは幸せになれるのか」、「ルンペルシュティルツヘン気の毒すぎ」と考えた作者が、これを題材に6通りのバリエーションを語ります。

話の骨格は変えずに、ルンペルシュティルツキンが女だったり、エルフだったり、父親だったり、そして娘の方も賢かったり、美しかったりするかと思えば傲慢で愚かな娘もあります。

【感想】
一つの話を6通りに語るという構成が面白いです。ひねりと皮肉がきいていて、どの話も元の話の問題点を解消していて小気味が良く、説得力があります。私は「藁を金に」がロマンチックで好きです。

【評価】
★★★★☆

Breath(Donna Jo Napoli)

【題材】
ハメルンの笛吹き

【あらすじ】
のう胞性繊維症を抱える少年、ザルツの見た、13世紀ドイツのハメルンの町。ネズミが大発生し、穀物は麦角病に侵され、これを食べた人々は次々と四肢の収縮、妄想、死産、死亡に至ります。笛吹きによってネズミは駆除されるのですが、ハメルン市長が代金を支払わなかったため、子供たちが連れ去られます。病気の描写がグロテスクであり、他にも妄想に駆られての暴力、家族殺し、魔女集会など、ネガティブな事件ばかりが次々と起こります。しかもラストは地獄絵図のようです。

【感想】
題材として面白いですがあまりにも暗く、読んでいて気分の良いものではありません。残虐なのが好きな人にはいいかもしれません。ただ、娯楽のための読書なのでもっと楽しい話を読む方が好きです。

【評価】
★★☆☆☆

2011年12月15日木曜日

BBC Global News

リスニングの勉強にと思い、i-tunesでダウンロードしてBBCのニュースをたまに聴いています。アメリカに住んでいるのだからABCとかCNNを聴けば、という感じですが、イギリス英語の方が子音をしっかり発音するので聴き取りやすいのでした。ところで、OxfordだかCambridgeだか忘れましたが、どちらかの大学の出身者の常として「話し始める時にわざとどもる」という伝統?があるそうです。こんなに変な伝統もないと思います。さすがにアナウンサーはナレーションの時にわざとどもることはしませんが、インタビュアーの中には話し始める時にイヤミたらしくどもってしゃべる人がいて、なんだかなぁ、と思ってしまいます。英語の映画は英語字幕がないと聴き取れない上、字幕を読む速度が遅いので時々止めながら見ているというていたらくですが、Naxos Audiobookは聴きやすいのでこれも活用しようと思いました。

2011年12月8日木曜日

11月に読んだ本

洋書を読むとき、分からない単語があっても前後から意味を推測して読む速度を速くすることを心がけて、その度に辞書を引くことはしないようにしています。ただ、1ページに10以上も知らない単語が出てくると辞書を引かないと全体の意味がとれなくなってしまうため、辞書を使わざるを得ません。読もうとして途中で頓挫したA.S.ByattのThe Virgin in the Gardenは単語が難しくて構文も複雑で、なかなか読み進められませんでした。
そこで、英文にもっと慣れるまではもう少しやさしいものを多読しようと思いました。ドナ・ジョー・ナポリは、日本でもグリム童話のアダプテーションなどが翻訳されていて、人気のある作家です。アメリカの図書館にはどこでも10冊以上蔵書があり、常時半分くらいは借り出されています。一文が短くて語彙も易しく、しかも読み始めると引き込まれる面白さで、私のような英語学習初心者にはうってつけかと思いました。
  1. Hush
    紀元900年ころ、アイルランドの小国の王女であるメルコルカの物語です。もともとは、「アイスランドの首領、ホスクルドがロシアの奴隷商人から買った奴隷の愛人は、言葉を発さなかったが、息子が生まれて話しかけているのを聞いて初めて彼女がメルコルカという王女であることを知った」という、「サガ」の逸話から題材を取っているそうで、サガにはそれだけしか情報がないところ、ナポリはメルコルカが奴隷商人に誘拐されてから買われてアイスランドに連れられて行くまでの旅を描いています。過酷な状況で黙秘の誓いを立て、賢く思いやり深い女性に成長していくメルコルカが魅力的です。人間が売買されて人間らしからぬ扱いを受けるということはショッキングであり、最初は傲慢な王女で、奴隷を使う立場であったメルコルカが逆の立場に落ちるのは色々と考えさせらるものがあります。

  2. Song of the Magdalene
    マグダラのマリアがキリストに出会うまでの物語です。西アジアの乾燥した気候やユダヤ教の慣習などを背景に、ミリアム(マリアのヘブライ語読み)幼馴染で肢体不自由者のアブラハムとの恋や、社会から排斥されるさまが書かれ、キリストは女性を含め、弱者にとって救いだったのだろうと思いました。ミリアムの人生には次々と辛いことが起こりますが、一つ一つがドラマチックで、また切なくもあり、読み始めると止まらなくなります。

  3. The Smile
    レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」のモデルと言われているリザ・ジョコンダの小説です。舞台はメディチ家が権力を持ち、サヴォナローラが民衆を扇動した16世紀のフィレンツェです。題材としては面白く、色々に時代や場所を変えてその時々の様子を魅力的に描写するナポリはすごいな、とは思うのですが、主人公のエリザベッタが少しつまらない人で作品を損なっているのが残念です。「モナリザ」を題材に取った小説としてはカニグズバーグの『ジョコンダ夫人の肖像』の方がお勧めです。






2011年12月4日日曜日

Thomasvilleの椅子

Thomasvilleで椅子を買いました。Thomasvilleはアメリカでは高級と言われる家具店ですが、最近は評判がガタ落ちで、about.comには"overpriced garbage"などの投稿があります。店で展示されている家具はしっかりした作りでしたし、ともかく値段は高級なので期待していました。ところで、オーダーメイドなので注文してから配達までに4~6週間かかると言われましたが、実際には12週間以上かかり、その間に上記の評価を見つけたので、その後は戦々恐々としながら待っていました。購入前にこのサイトを見つけていたら、ここでは買わなかったと思います。日本ではだいたい、値段と品質が釣り合っていることが多いので、「これだけの値段を出せば間違いないだろう」と考えたのですが、アメリカではそうもいかないようです。その椅子が届きました。

この椅子は、もしもThomasvilleの言っていることが本当ならアーミッシュの職人が製作しているとのことです。かなり重くて、大きい頑丈そうな椅子です。クッション付きの椅子は布の部分が洗えないのが嫌で、敢えてクッションなしのものを選んだのですが、やはりお尻が痛くなります。なので、クッションは別売りを入手しようと思っています。椅子は帰国時に持ち帰る予定です。