The Group (本)

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【書誌情報】
The Group, Mary McCarthy, Harcourt Brace Jovanovich, Publishers,1954

【あらすじ】
1933年にアメリカの名門女子大、ヴァッサー大学を卒業した8人の女性達の7年間。劇作家と結婚するものの、結婚に破れるケイ、出版エージェントとして活躍するリビー、アリゾナの鉱山王と結婚するドティ、小児科医と結婚し、息子の躾と非協力的な夫に苦労する優等生のプリス、検査技師として病院に勤務し、不倫の恋をするポリー、ヨーロッパに留学してレズビアンとして帰国するレイキー、多芸多才のヘレナ、卒業記念に飛行機を買ってもらうほどの資産家の令嬢のポーキー。本作品の詳細についてはこちらのサイトが分かりやすく魅力的に書かれてあります。

【コメント】
女子校とか、姉妹とか、女性が色々登場してあれこれする小説が大好物です。特に、19世紀末~第二次世界大戦後の時代は、古い価値観が残りつつも、社会や技術の変化が大きく、小説もドラマチックになるように思います。

高い教育を受けたとはいえ、 社会的に成功をおさめるのは8人のうち一人だけで、ほとんどが裕福な家庭の出身でお金のために働く必要はなかったため、7年間で「奥様」になるか、そのまま独身貴族を続けます。「良い夫婦」と作中で明言される結婚をしたのは一人だけで、他の人たちは浮気をされたり、威張るだけで育児に非協力的だったり、職業と財産以外にはほとんど言及されない存在感のない男性と結婚します。ミソジニーや偏見に満ちた、我儘な男性ばかり登場する印象ですが、小説は完全に女性目線で書かれてあって、女にとっての「良い男性」とは少なからず「都合の良い男性」でもあるわけで、本書に登場するような女性たちを男性視点で書いたら、男性にとっては「都合の悪い女性」の方が多いことでしょう。男性にとって都合の悪い女性を女性目線で書いた文章を女が読むと大変おもしろいのです。

出身家庭とか、当時の社会状況などの様々な要因で、女性にとって現代よりも生きにくい時代だったのだろうと思いますが、気の強いリビーがヨーロッパの貴族に迫られたり、おとなしく思慮深く、少女小説のヒロインとして完璧なポリーが不可解な精神医学のことで悩まされた挙句に精神科医と結婚したり、プリスが息子のトイレット・トレーニングに苦労したりするさまは一歩引いて見ればユーモラスでもあります。

小説は、1966年にシドニー・ルメットにより映画化されました。華やかで楽しい映画です。女優さんたちが、原作の登場人物のイメージに合っています。シリアスな場面でも女性合唱の爽やかな音楽が挿入されて、軽快な雰囲気です。2003年に公開された、1950年代のウェルズリー大学が舞台の『モナリザ・スマイル』はこの映画へのオマージュと思われます。

'Daisy Chain'に参加した、というエピソードが何度か登場するため、何のことだろうかと少し調べてみたらヴァッサー大学の卒業式の際に、課外活動等でリーダーシップを発揮したと認められた、選抜された3年生が約50メートルのヒナギクと月桂樹の花鎖を担ぐ、という行事があるらしいです。優雅な伝統だと思いました。

1909年のDaisy Chain
なお、日本語訳は『グループ』のタイトルで早川書房から出版されていますが現在絶版のようです。

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