アンドレ・マルティを飾った



自分では手が出ないような、高価な本を頂きました。元の所有者は、その本を全部でどのくらい閲覧したか、恐らく10時間には満たないはずです。そう考えると、勿体ない気がしました。私の所有する、貴重な本は何だろうか。私は、一生の間にその本を何時間くらい、眺めるだろう。今ではすっかり廃れましたが、若い頃は、稀覯本収集の趣味が少しあり、乏しい給料から捻出して、時々購入していました。美術館に収蔵するくらい、貴重でも、卒倒するほど高価というわけでもないけれど、これを、どんなに長くても一生で2時間くらいしか閲覧しないのはもったいなく、毎日、目に着くようにした方が良いです。額装して、展示しようと考えました。

飾ろうと思ったのは、アンドレ・マルティのポショワールでした。同時代のイラストレータは、ジョルジュ・バルビエが有名ですが、淡い色彩で、上品でかわいらしく、癖のないマルティが好みです。折しも、千代田区立図書館で、「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」を開催していたので、実際飾ったときのイメージを掴みたかったのと、額装の参考にしたいと思って、出かけました。展覧会を見て、やはり、これは自室にも飾りたい、と思いました。絵自体がすばらしいので、額に凝ることはないと思いました。


安価なフレームと、絵のサイズに合わせたマット紙を準備しました。ハンマースホイの作品で、テーブルや、ピアノの上の壁に、絵が、左右対称に2枚、飾られていることが多いので、真似して、机の上に2枚、飾りました。『聖ヨハネ祭の夜』と『青い鳥』から、選びました。『聖ヨハネ祭の夜』は、化学の実験室で、夜、先生がパイプを持っている絵です。化学工場の研修で、1カ月間、交替勤務(夜勤あり)をしたことがあるので、他人事とは思えない風景で、少し懐かしい感じがします。窓の明かりと、一点透視法の整然とした構図が気に入っています。『青い鳥』は、チルチルが、未知の扉を開けてびっくりしています。噴水も良いです。マルティはスペースの取り方や、配置がオシャレです。

仕事の合間に、ふと顔を上げたら薄明かりの絵画が目に入るのはうれしいです。仮に、毎日1分としても、年間では6時間ほどで、本棚に挟んでいるよりも、何倍も見ることになります。ポショワールを作って、というのは難しいかもしれませんが、アンドレ・マルティはとてもすてきなので、画集が出版されると良いな、と思っています。

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