記念日の料理が生焼けだったら

自作の記念日の料理。生焼けではありません。
10年前のエライ人研修の問題で、「記念日に奥さんの作った魚料理が生焼けだったらどうするか」というものがあったそうです。回答の選択肢は、①何も言わず食べる、②生焼けを指摘する、の2個でした。もちろん、本当に聞きたいのは「部下の仕事の出来が不十分だった時に、上司としてどう対応するか」です。対等(であるべき)な夫婦関係を、対等ではない上司と部下の関係の問題と同じに扱っている点や、料理は全部女性がすべきで、夫は手を動かさない前提など、設定に問題があると思いますが、たとえ話としては結構便利だと思っています。

この話を聞いた新入社員の私は、私なら「黙って自分で追加で焼く」です、と夫に話しました。また、夫と食べていた魚が生焼けだった時に、夫は「この魚はもう少し焼いた方がええな。あなたの分も一緒に焼く?」と言ったので、夫婦という関係において、夫の反応は120点だと思いました。

しかし、実際に、部下の仕事の出来が不十分だった時に、上司が「黙って焼いてしまう」ことが必ずしも良いとは思えません。色々な場合が考えられます。
  1. 急いでいる時:黙って上司自ら焼いて、出すしかないと思います。
  2. パセリとレモンを添えればよく、焼き直すほどではない時:上司自らパセリとレモンを添えて、部下に渡すのが親切と思いました。部下も、次回からはパセリとレモンも添えよう、と思います。
  3. 中火であと5分焼いて欲しい時:「中火であと5分焼いて」と指示するのが最善と思います。自分で焼いて、部下に「どうですか」はやり過ぎだし(部下としては、ありがたいけれど、申し訳なくて申し訳なくて、また、自分が出来が悪いことを恥じて、消えてなくなりたい気分になります)、かといって、「この魚まずい。私の口に合うように料理し直して」では部下も困ります。
  4. 追加調理等ではどうにもならないほどひどい時:渡したレシピに問題があったのかもしれないので、根本原因を部下と一緒に考え直すことになるかと思います。
私は部下であったことしかないので、部下の立場からは、ひどすぎる出来の魚を出さないため、調理を始める前に、レシピをもらっておくこと、レシピによく分からない部分があったら「塩1つまみってどれくらい、とかいうつまらないことを訊いて良いんだろうか」と悩まず(塩1つまみについては、ネットで調べれば解決するけれど、case by caseの指示の分からない点はネットで調べようがない)質問すること、レシピを渡されたら、皿に盛り付けて出すところまで黙々と作業するのではなく、途中経過で1回は見せて、やり方に間違いがないかを確認すること、くらいしか対応が思いつきません。申し訳なさで部下を責めるのは部下にはとても応えるし、次回以降に、指示が曖昧な部分について「私の理解が及んでいないのが悪いのだろうか」と思って、質問をしにくいことにはなるので、新入社員の私のように、「黙って自分で魚を焼く」のは、あまり良い解決ではないと思います。かといって、生焼けを食べたら自分も部下も、場合によっては、招待した来客までお腹を壊す結果になるので、論外です。

とはいえ、昨今の部下は、魚焼き、タコ焼き、皿洗い、給仕等をしつつ、両側から挟まれるブタ(Pig in the middle)、綱引きの綱の役割等もこなさなくてはならず、見かねた上司が自ら魚を焼いて下さることがよくあり、消えたくなることが多いそうです。


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