2013年11月24日日曜日

カズオ・イシグロ『充たされざる者』

この本の読後感
【書誌情報】
Kazuo Ishiguro, The Unconsoled, Faber and Faber, 1995=カズオ・イシグロ『充たされざる者』、早川書店、2007

【あらすじ】
著名なピアニストのライダーは、「木曜の夕べ」という催しで演奏するべく招かれていた。彼は催しの詳細を把握していないが、演奏会は町の危機を乗り越える望みのようである。ホテルのポーター、支配人、そのピアニストを志す息子等々、見ず知らずの他人が次々とライダーに頼みごとを持ちかける。

【コメント】
『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、最新作、『わたしを離さないで』も映画化されて話題となったカズオ・イシグロの実験的小説です。 文庫本で950ページという長さですが、主人公のピアニスト、ライダーに頼みごとをする町の人たちと、ライダーとの関係が明かにされず、町の「危機」が何であったのかも謎に包まれたままです。冒頭から最後まで、不穏な空気なのに妙に緩んでいて居心地が悪いです。

今まで読んだ本の中でも一、二を争うような退屈さで、読むのが苦痛でした。たまたま日本語訳を買ったので読みましたが、英語で読もうとしていたら挫折していたと思います。全体としては悪夢のような話で、私にはところどころデルヴォーの絵画や、映画『去年マリエンバードで』を思わせる部分もあったのですが、それらにあるような甘美さが本書にはなく、ただ単に1000頁も延々と砂を噛んでいるような感覚でした。かなりフラストレーションがたまりました。『わたしを離さないで』はおもしろく読んだので、カズオ・イシグロはいろいろな作風を使い分ける作家なのだろうと思います。

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