ロイド・ライトのオーナメント



 稀に、通勤途上にあるニコタマに寄り道をして、お店を冷やかします。日本のデパートはすばらしく、ディスプレイはかっこいいし、製品はセンスが良くオシャレで、にこやかで親切な店員さんが、買ったものをきれいに包装してくれるので、全力で購買意欲を刺激していると思います。ところが、欲しいものは1つもないのでした。これだけいろいろ揃っていているにもかかわらず、欲しいものが全然ないというのは、売る側の問題ではなく、買う側の問題に決まっています。まず、いくら良いな、と思っても相応の値段でないと判断すれば買わないし、使う機会があるのか、飾る場所があるのか、食べるのか、引越しの時、嫌にならないか、と考えると、結局「そこまで欲しくはないな」と思うに至ります。

でも、手持ちの物を隠していても意味がないので、飾ろうと思いました。アメリカで買った、フランク・ロイド・ライトのクリスマス・オーナメントです。正方形の方は、ルクスファー・プリズム社が販売する、プリズム・ガラスのデザインです。プリズム・ガラスは電燈があまり普及していなかった頃に、店の中に外の光を取り込むため、扉の上のカモイにはめ込まれたものだそうです。ボストンのアンティークショップで買いましたが、1993年製(メトロポリタン美術館)なので、アンティークどころか、ヴィンテージですらありません。 クリスマスモチーフではないので、ずっと飾ることにします。

長方形の方は、ニューヨーク州バッファローにある、ダーウィン・マーティン邸のステンドグラスのデザインから取られています。「生命の樹」と呼ばれるデザインです。MoMAの現行品です。金属製で、少し七宝が施されていて、アメリカ製品としては珍しく、精巧な造りです。栞として販売されていましたが、頁の間に挟んでおかずに、見せびらかしたいと思いました。コルクボードに布を張って、貼り付けてみました。普段、工作などはしないので、カッターの刃を折るときに盛大に手を切るというマヌケなことをしてしまいました。階段の手すりに沿って、傾斜を付けて取り付けました。

夫は、私以上に物欲のない人ですが、オーナメントを机の上に出していたら「お、ロイド・ライトやね」と言いました。 「なんで分かるんですか!?」と心底驚いたのですが、「あなたにあれだけ見せられたら、誰だって分かるようになるわ」と言っていました。

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