東急文化村 ラファエル前派展



渋谷の東急文化村で開催中の、「英国の夢 ラファエル前派展」に行きました。リヴァプールにある3つの美術館に所蔵されている、ラファエル前派の作品が展示されています。作品数は60点余りと少ないですが、色彩豊かで中身の濃い作品が多く、見応えがあります。
J.E.ミレー『リンゴの花』1856-59年
ラファエル前派の画家の描く女性像は魅力的です。以前からラファエル前派関連の本や画集はそれなりに読んだので、実物を見るのは初めてなのに、なじみのある作品もありました。J.E.ミレーの『リンゴの花』は見られてうれしかった作品の一つです。色とりどりの服を着た少女たちがバランス良く配置され、目に快い作品です。細部まで精緻に描かれています。色鮮やかな服、若い女性、という点ではポスターにも使用されているウォーターハウスの『デカメロン』にも通じるものがあります。今回、D.G.ロセッティは少なめで、バーン=ジョーンズは『レバノンの花嫁』と、天使の絵がありました。

エドワード・バーン=ジョーンズ『フラジオレットを吹く天使』1878年
バーン=ジョーンズの作品の気高さは際立っています。ラファエル前派らしい、甘く、華やかなだけではない、高貴な精神を感じさせるような。『レバノンの花嫁』は雅歌を主題としています。パブリックドメインの画像が見つからないため、載せませんが、ユリの花が印象的です。


twitterで「薄明かりの絵画@twilight_art」のアカウントで絵画の紹介をしています。これに登録してある800強の画像のうち、今回は2枚、実物を見ることができました。

アーサー・ヒューズ『ガラハッド卿の聖杯探求』1870年
かなり大型の作品で、画像を縮小するとなんだかよく分からない、という感じですが、濃紺の夜空に3人の天使が飛んでいて、清らかな雰囲気の、美しい一枚です。

アルバート・ムーア『夏の夜』1890年
 4人いる女性は、実は同じ一人の女性の姿を描いているのだそうです。遠景の夜の海と、灯りが良いです。ガーランドや、床に置いた東洋の壺、古代ギリシア風の女性像などは唯美主義的なものだと思います。

展覧会のあと、ル・シネマで『アンジェリカの微笑み』を見ました。映画自体は微妙だと思いましたが、帰宅してチラシを眺めていて「おや!」と思ったのは、映画の女優さんがペルジーニのシャクヤクを抱えた婦人によく似ているということでした。伏し目の表情だけでなく、容貌も似ていると思います。文化村も芸が細かいです。

私がラファエル前派の追っかけをしていた中~高校生の頃は、ラファエル前派関連の画集はあまりなくて、高価な洋書の画集を羨望の目で眺めていたものですが、ここ10年くらいで急速に画像が充実し、ポストカードブックなども出版されるようになりました。ミュージアムショップは百花繚乱です。同時にインターネットできれいな画像が見られるようにもなりました。15年前にこれくらい資料が豊富にあれば、10代の自分は大喜びしたと思いますが、美に耽溺して身を持ち崩していたような気もします。

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