【本棚】I.Murdoch, Bruno's Dream


本文と関係ありません

【書誌情報】
Iris Murdoch, Bruno's Dream,1969,Chatto & Windus

【あらすじ】
印刷会社を経営していたブルーノはそれなりの成功を収めたが、80歳を過ぎて、認知症になりかけている。浮気をしたことで最後まで妻の信頼を回復することなく、妻は若くして病死し、娘もまた、若くして溺死し、息子マイルズとは、彼の配偶者を拒絶したことから長く絶縁状態にあった。娘婿ダンビーと、あやしげな看護士のナイジェル、メイドのアデライードに介護をされていたところ、マイルズの妻とその妹も彼を訪れるようになる。一方、ナイジェルの双子の弟、ウィルと、アデライードは恋人関係にあったが、アデライードはウィルにそそのかされて、ブルーノの切手コレクションから、高価な一枚を盗もうとする。

【コメント】
40年間にわたり、全部で26冊の小説を出版したなら当然とは思いますが、マードックの小説は結構玉石混交と言うか、当たり外れが大きいです。長さがあっても、「大外れ」と思うこともあって、それに当たった時はがっかりしますが、それでも読み続けようと思わされるのがマードックの魅力だと思います。当たり外れとはいっても、私は「これはダメだ」と思った作品も、Goodreadsでの評価は高い、ということもあるので、単に自分には合わない、ということです。

Bruno's Dreamは私にとっては「当たり」で、図書館で借りて読んで、すぐにKindle版を買いました。近いうちに再読しなければ、と思います。認知症になりかかっている高齢の男性の回想が、繊細な優しい筆致で書かれています。アルツハイマー病の実際は、生易しいものではないでしょうから、ちょっときれいに書きすぎという気がしますが、文学としては優れていると思います。登場人物それぞれが後悔や悲しみ、鬱憤を抱えているものの、楽しかった思い出とか、抑えたユーモアと巧みに混ざり合って、きれいなマーブル模様になっているのが好ましいです。

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マードックの小説を全部読もうと思ったのですが、22/26冊読んで、The Message to the Planetを読み始め、200頁くらいで頓挫しています。未読の中で、An Accidental Manも読みにくいらしいので、果たして本当に全部読めるかどうか、自信がありません。そこで、道半ばであるものの、これまで読んだ作品を一覧表にしてみました。Aは、ユニークで個性が強い、ストーリーがおもしろい、意外性がある、でCはその反対です。登場人物の多寡や、魅惑者の登場の有無はだいたい客観的に評価できることですが、「キャラクターが個性的か」とか「ストーリーが巧みか」、「総合的におもしろいかどうか」などは完全に主観ですので、ご了承願います。
ついでに、村上春樹ビンゴの真似をして、マードック・ビンゴを作ってみました。もっと色々な種類を作らないと、使いものになりませんが、絶対に誰も遊ばないと思うので、お笑い種にしてください。

なお、英語版Wikipediaには本の内容の美しさや微妙さなどを完全に無視して、無味乾燥にネタバレだけをした粗筋が書かれています。これから読もうと思う方は、Wikipediaのあらすじは事前に読まないことをお勧めします。

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